8月31日(現地時間)、サンフランシスコのMoscone CenteにてVMware主催のテクニカル・カンファレンス「VMwrold 2010」が開幕した。今年のテーマは「VIRTUAL ROADS. ACTUAL CLOUDS」。クラウド環境の活用を促進する新たなテクノロジーが多数発表された。
ここでは、初日の基調講演の模様を簡単に紹介しよう。
VMworld 2010はサンフランシスコで開催。今年はMoscone Westも巨大なハンズオンラボの会場として使用された |
Moscone Center内にはいたるところに「VIRTUAL ROADS. ACTUAL CLOUDS」のメッセージが |
「IT as a Service」の実現に向けて必要なもの
ゼネラルセッションに登壇したVMware 社長兼CEOのPaul Maritz氏は、自身の講演の冒頭でIDCの調査結果を引用しながら、「2009年は、世界で運用されている仮想マシンの数が物理マシンの数を超えたという節目の年だった」とコメント。仮想化技術がエンタープライズの世界に浸透したことを強調した。
そのうえで、氏は仮想化技術の歴史を振り返り、「現在は進化の第3ステージに入っている」と分析。「コスト削減がメインテーマで仮想環境がハードウェアとOSを仲介してサーバ台数削減に貢献した第1ステージ、ビジネスの生産性とシステムの信頼性を高めることに主眼が置かれてネットワークやストレージの仲介も担ってきた第2ステージに続き、これから迎える第3ステージでは"価値の創造"という点に目が向けられ、オペレーションを改善するようなビジネス・エクスペリエンスの変革が起きていくだろう」との見解を示した。
さらにMaritz氏は、第3ステージで求められるIT像を「IT as a Service」と表現。その意味を「Optimizing IT production for busines consumption」と定義したうえで、必要になときにジャストインタイムで手に入り、使った分だけ支払う(Pay Per Use)といった新たな料金体系のITシステムが求められるとした。
これを具現化するための課題としてMaritz氏は、"Pay Per Use"を実現する購入/課金システムと、セキュリティの2つを列挙。特にセキュリティに関しては、「安心して利用できるようにするには、仮想環境向けのセキュリティを確保することが不可欠。物理構成に縛られることなく、論理的な境界を保護できるようにならなければいけない。そのうえ、プライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させるハイブリッドクラウド環境においても、アプリケーションやデータをセキュアにやりとりできる必要がある」と、従来とは異なる技術が必要であるとの考えを示した。
この2つの課題を解決するための製品として、VMwareでは「VMware vCloud Director」、および「VMware vShield」ファミリに属する3製品を発表。さらに、これらの製品と同社の仮想化プラットフォーム「VMware vSphere」を使って構築したパブリッククラウドサービスを「VMware vCloud Datacener Services」として認定し、VMwareテクノロジーで構築したプライベートクラウドとセキュアかつ柔軟に連携できるサービスであることを保証していくことも明かした。現在、同認定を受けたサービスプロバイダーとしては、BlueLock、Colt、SingTel、Terremark、Verizonの名が挙げられている。
クラウド時代のプログラミング環境
ゼネラルセッションでは、開発者向けのメッセージも用意された。それが、Springをベースとしたアプリケーション・プラットフォーム「VMware vFabric」である。
Maritz氏は、「現在、さまざまなPaaSが存在するが、環境が変わるたびに煩雑なプログラミング作業や設定作業が発生するようでは、開発者は辟易してしまう。開発の手間を省くためには、1つのアプリケーションをさまざまな環境で動くようにすることが大切。そのためには、プログラミングレベルの新しいレイヤーを作る必要があるし、共通のマネージメントツールも提供する必要があるだろう」とコメントした。
そのためのプラットフォームとして「VMware vFabric」を紹介。vSphere環境向けに最適化を施し、パフォーマンスの向上などを実現するという。
VMware vFabricに含まれるプロダクトとしては、SpringSourceが提供するSpringフレームワークや各種の開発ツールに加え、実行/管理環境として、軽量のアプリケーションサーバ「tc Server」、データの分散キャッシュを実現する「GemFire」、クラウドに対応したメッセージングサービスを提供する「RabbitMQ」、Apache Web Serverのエンタープライズ版と位置づけられ、ロードバランサの機能などを備える「ERS(Enterprise Ready Server)」、アプリケーションの状態を可視化し、パフォーマンス管理を実現する「Hyperic」などが組み込まれる予定。さらにこのプラットフォームをVMwareが提携するGoogle App EngineやVMforceなどにも組み込み、作成したアプリケーションが外部のPaaSにおいても同じように動作する環境を作るという。
なお、vFablicが現在サポートするのはJavaのみだが、将来的にはPHPやRuby(Ruby on Rails)など、Java以外言語にも対応させていく考えだ。
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ゼネラルセッションでは、そのほかにも、新たなバージョンがリリースされた「VMware vSphere 4.1」、「VMware View 4.5」、「VMware ThinApp 4.6」などが紹介されたほか、同日買収がアナウンスされたIntegrienやTriCipherの技術も披露された。これらについては別途取り上げていこう。