ストレージベンダーの米3PAR買収を巡る米Dellと米Hewlett-Packard (HP)の攻防がさらにヒートアップしている。直近26日(現地時間)の発表でDellによる3PARの1株あたり24.3ドルでの買収で合意した両社だが、HPは買収金額を1株あたり27ドルへと引き上げている。その後、翌27日に1株あたり27ドルでの買収で再合意したDellと3PARだが、今度はHPが1株あたり30ドルまで引き上げる再提案を行った。最初の買収合意からものの10日程度で買収金額が2倍近くに膨れあがるという異常事態に発展している。

もともとここ数ヶ月は10ドル前後で推移していた3PARの株価だが、16日のDellの買収合意発表によって18ドル水準まで一気に引き上げられた。その後23日にHPが24ドルの高額買収提案で両社の合意に割り込んできたことで、株価もこの水準まで一気に上昇することになる。そして26日にDellと3PARが24.3ドルでの買収で再合意すると、HPはその日のうちに買収金額を27ドルへと引き上げる。そして翌日、本件で報じているDellと3PARの27ドルでの再々合意、そしてHPによる30ドルへの再度引き上げ……という状態だ。

つまり、Dellによる買収合意をきっかけにわずか半月程度で株価水準にして3倍、買収金額だけでも2倍規模にまで急拡大していることになる。27日のニューヨーク株式市場がオープンした直後の原稿執筆時点の3PARの株価は31.60ドル前後。時価総額にして19億8000万ドルほどとなる。同社株の取引量も急増しており、今後DellとHPの買収合戦が続くことをにらんだ展開に参入者が増えている状態といえる。

問題なのは、ここまで両社が3PAR買収にこだわる理由と今後の展開だ。まず今後の展開については、Dellが買収合戦から早々に手を引く可能性が指摘されている。米Wall Street Journalの27日付けの記事では、すでにDellの当初の目論見金額を大きく外れており、買収金額高騰を嫌ったDellがHPに買収を譲る計画であるという関係者の話を紹介している。Dellと3PARの合意破棄における違約金は7200万ドルを設定しているという。買収合戦を続けるにしても、もうほとんど金額を引き上げる余地はない可能性が高い。

一方でHP側が買収にこだわる理由だが、3PARのカバーするクラウド系技術の重要性とともに、もうIT企業同士のM&A戦略が飽和に近付きつつある可能性が考えられる。スタートアップを含め企業自体はまだ多く業界に存在するが、戦略に沿った買収が可能な企業の数が限られつつあるのだ。そのため、本来であれば割に合わないような買収合戦が今後数多発生することもあり得るだろう。