日本IBM執行役員、グローバル・ビジネス・サービス事業ストラテジー&トランスフォーメーション担当の金巻龍一氏 |
日本アイ・ビー・エムは8月10日、日本のCEOへの調査結果をまとめたレポート「IBM Global CEO Study 2010 Japan Report」を発表した。
同レポートは、今年5月に発表した世界中のCEOに対する調査結果「IBM Global CEO Study 2010」における日本の回答を分析したもの。「同調査結果の中に日本だけ顕著に異なる傾向が見られた箇所があったため、米国から詳細の分析を依頼され、Japan Reportの作成に至った」(日本IBM執行役員、グローバル・ビジネス・サービス事業ストラテジー&トランスフォーメーション担当の金巻龍一氏)という。
世界のCEOと日本のCEOにおける相違点
日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 ストラテジー&コンサルティング 成長戦略コンサルティング パートナーの池田和明氏 |
同レポートでは、日本のCEOが世界のCEOよりも「グローバル化」と「環境問題/社会問題」の2項目を特に強く意識していることを紹介。グローバル化については、「今後3年間で自社に最も大きな影響を与える外部要因」という設問で、日本のCEOの41%が選択したのに対し、グローバルでは23%という結果となっている。また、環境問題/社会問題に関しては、「今後5年間で自社が大きな影響を受ける要因」という設問で、日本のCEOの84%が選択したのに対し、グローバルでは59%という結果だった。
新たな経済環境に対する認識については、「予測ができない」と答えた企業が、世界では65%だった一方で、日本では38%と低い数値になっている。さらに同設問に関して、「従来よりも多くの要因が影響している」、「従来とは構造が異なる」と答えた日本のCEOの割合がそれぞれ81%、82%となり、世界のCEOの回答よりも20~30%上回った。
この結果に関して、日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 ストラテジー&コンサルティング 成長戦略コンサルティング パートナーの池田和明氏は、「ヒアリングの結果、日本のCEOからは『変化の方向性は想像がつくものの、それがどのタイミングで起きるのかはわからない』といった意見や、『予測ができても変化への対応をとるのは難しい』といった意見が聞かれた」と説明。続けて、韓国では92%のCEOが「予測できない」と回答したことを紹介したうえで、「韓国やグローバルでは、経済環境の変化は予測できないという前提のうえで、柔軟に対応する経営方針をとっているのに対し、日本ではある程度の予測の下に事業の方向性を決めるという違いがあるのではないか」との見解を示した。
日本企業上位40社の特徴
Japan Reportでは、IBM Global CEO Study 2010で好業績企業が注力していると分析した3領域「組織に創造性を発揮させるリーダシップ」、「顧客接点を新たな発想に作り変える」、「オペレーションに『巧さ』を追求する」に関して、日本の”花形企業”と日本企業の比較も提示している。
なお、ここで言う花形企業とは、金融危機以前の長期観点と金融危機以後の短期観点の両方で業界平均よりも標準偏差+1以上の業績を残している企業のことで、今回のレポートでは40社が選ばれている。
組織に創造性を発揮させるリーダシップという領域では、日本のCEOがグローバルに比べて人材改革に積極的であり、花形企業では全40社がその姿勢を示していることを紹介。さらに、日本のCEOが世界のCEOよりも意思決定の迅速さを強く意識しており、トップダウンのスタイルを志向しているとしたうえで、花形企業ではその傾向がさらに強いことを明かしている。
この点に関して池田氏は、「欧米の企業ではトップダウンの意思決定スタイルができあがっている一方で、日本の企業はボトムアップからトップダウンへと変更しようとしているため、このような結果になったのではないかと」と分析した。
また、顧客接点を新たな発想に作り変えるという領域では、「製品・サービスの価格と価値のバランス」で、グローバルと日本に大きな差が出た。顧客から期待されている項目として上記を挙げたCEOは、グローバルで45%だったのに対し、日本では76%。さらに花形企業では100%という結果だった。
これに関しては「日本国内が低価格化志向にあるのに加えて、新興国への進出を考えている企業が各国のボリュームゾーンを捉えなければならないという背景から来たものでは」(池田氏)との見方を示した。
一方、オペレーションに「巧さ」を追求するという項目に関しては、日本とグローバルで大差はないものの、好業績を残している企業とそのほかの企業の間には大きな違いがあることを紹介。「オペレーションをグローバルに最適化する」と回答した企業が、日本の花形企業で63%だったのに対し、日本およびグローバルでは32%、34%という結果であったうえ、オペレーションの複雑性への対処方法として単純化と管理のどちらを選ぶかという設問については、「単純化する」と回答した企業が日本で55%、グローバルで48%だったのに対し、日本の花形企業が63%、グローバルの高業績企業が61%という結果になっている。
加えて、今後の変革について「広く外部と提携する」と回答した企業は、グローバルで70%、日本で65%だったのに対し、花形企業では88%という結果。これを受けて池田氏は、「日本企業においても自前主義は過去のもので、外部の能力を取り込むことに積極的になっている」と説明した。
レポートは、こちらのWebサイトにて個人情報を登録することで、無償で入手できる。
IBM Global CEO Study 2010 Japan Report |