米Googleと米Verizonは8月9日(現地時間)、米国においてインターネットのオープンネスを維持していくための立法的な枠組みを提案した。ネットの中立性の議論の妥協点を探るための叩き台としており、ISPによる特定のコンテンツやサービスに対するトラフィック制限を禁じる一方で、プレミアオンラインサービスの提供を認めている。
米国のインターネットの健全な成長を支えていく上で、2社は2つのポイントを挙げる。まずユーザによるコンテンツ、アプリケーション、デバイスの選択の自由。もう一つは米国のブローバンド・インフラストラクチャへの投資とイノベーションを促す環境づくりだ。前者はトランスフォーマティブ媒体としてインターネットの可能性を広げ、後者は米国のグローバル規模の競争力を維持する。
2社が提案するフレームワークには、ユーザーによる選択の自由に加えて、有線ブロードバンドプロバイダが特定の合法的なインターネットコンテンツ、アプリケーションまたはサービスを優先したり、逆に制限するような選別的な行為を禁じる規制が盛り込まれている。またトランスパレンシー規則も設けられており、ブロードバンドプロバイダは提供しているサービスや機能、ネットワーク管理などインターネット利用に関する全ての情報をユーザーに提供しなければならない。米連邦通信委員会(FCC)が、こうしたブロードバンド規則を管轄し、違反者に対して最大200万ドルの罰金を科す権限を持つ。ただし、その権限はユーザー保護とオープンネスの維持の範囲に限られ、またFCCがブロードバンド関連の規則を制定することはできない。
このほかブロードバンド・インフラをイノベーションを促すプラットフォームとして成長させるために、ブロードバンドプロバイダに対してインターネットアクセスと動画サービスとは別に専用オンラインサービスを提供することを認めている。ブロードバンドプロバイダがサードパーティと開発する新サービスの可能性として、医療モニタリング、スマートグリッド、教育サービスなどを挙げている。
フレームワークは有線ブロードバンドが対象で、無線ブロードバンドについては成長段階にあるという理由からトランスパレンシー規則以外は適用されない。
このフレームワークに対して、米国ではすでに様々な議論がわき起こっている。ISPによるトラフィック制限を法的に禁じる内容を称賛する声がある一方で、"合法的"という表現ではネットの中立性の議論で争点となっているP2Pサービスの扱いがあいまいになるという指摘もある。また専用オンラインサービスを認めると、小さなネットワークにインターネットが占められ米国におけるTVのケーブルネットワークのような状況になるという懸念が出てきている。