Adobe Creative Suite5が発売されてから約2カ月。導入したクリエイターからも、高い次元で纏め上げられた機能について評価が高まるなか、Adobe Photoshop プロダクトマネージャーを務めるブライアン・オニール・ヒューズ氏(以降、ヒューズ氏)にインタビューする機会を得た。

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Adobe Photoshop プロダクトマネージャー ブライアン・オニール・ヒューズ氏

「Photoshop CS5」という革新的製品を無事リリースできた達成感からか、終始おだやかな表情のヒューズ氏。プロダクトマネージャーとして、どのようなスタンスで業務に当たったのかを、まず伺った。「私の主な仕事は"こんな機能が欲しい"というユーザーの声を、如何に製品に反映させるか、開発サイドとユーザーを繋いでいくことです。また、私自身写真家でもあるため、いち写真家、いちユーザーとして感じる部分についても反映していきます」

製品の性能をより引き上げるため、ユーザーからの声に耳を傾ける。同社のユーザーに対する真摯な姿が伺えるコメントだ。では、具体的にどういった声を拾い上げて製品に反映していったのであろうか。

「私たちの製品を使ってくださっているユーザーの皆様は大変に熱心な方が多く、数々のご意見を頂戴しています。弊社内にはそういったユーザー調査だけに特化した部署があり、カンファレンスやセミナーでの本格的な調査のほか、ユーザーへのグループインタビューなどを行い、日頃からユーザーの声を積極的に聞くことを徹底しています。そのようにして吸い上げた声を新機能として反映させ、プレリリースし、その感想をさらに吸い上げていきます。このようなフローにより、どのような機能を強化すればよいのかという方向性やガイダンスを明確に導き出せるのです」

プロダクトマネージャーとして舵取りを行う上で、一番重要視したのがユーザーからの声だと明言したヒューズ氏。さらに、Photoshopをより良い製品に育て上げるためのプロセスはほかにもあるという。

「プレリリースには、ユーザー調査では上がってこなかった新機能も盛り込んでいます。それは『投げ輪ツール』いうもので、ソーシャルサービス『Facebook』の中で公開し大反響を呼んだことがあります。いうなれば未来へのステップとしてチャレンジしているのです。ユーザーからのフィードバックは、私たちにとってひとつのバリデーションであり、"この方向で本当に正しいのか?"という検証作業です。そしてその中の、"より直接的に操作をしたい"という要望から生まれたのが『パペット機能』です。描画機能については、長年、革新がなされていなかったということもあり、何を成すべきかが明確でした。そのため、Photoshop CS5ではその強化を図りました。個人的には、その過程で発生した『JDI』(※)という取り組みについて大きな思い入れがあります。『JDI』は機能の大小を問わず、すべてを網羅しながらユーザーがどういった問題を抱え、どういった部分を変えて欲しいと思っているのかということを徹底して洗い出していったものです。つまり、『JDI』は100%ユーザーからの声で生まれ、ユーザーのために存在しているのです」

※JDIとは「just do it」の略語であり、ユーザーが新機能を試した印象に対してフォーラムやFacebook、Youtubeなどに情報を投稿し、議論していく一連の流れのことを指す

ヒューズ氏のみならず、プロジェクトに携わるスタッフたちは日頃からユーザー目線でPhotoshopを使っているという。そうした背景もあり、あらゆる声を集約した「JDI」は印象深いものなのだろう。またヒューズ氏は、今後も積極的にユーザーの声に傾聴していくと語った。「ユーザーからの声を聞くことは非常に楽しみなことです。なぜなら、世界中の人々が『Photoshop』をどう見ているのか、その世界観というものを感じることができますから。次世代を担う若者が何を望み、どういったことを実現したいのか。そういったことを知る術として『Facebook』や『Twitter』をもっと広範囲に活用していきたいと私は考えています」

気軽に意見を述べることが可能な「Twitter」と、プロジェクトをより身近に感じてもらうことができる「Facebook」。どちらのアプローチも、ユーザーに"Photoshop開発に参画している"という思いを抱かせる素晴らしい手法だ。今後どのように展開していくのか、その行動から目が離せなさそうだ。

次のページでは、斬新な新機能「コンテンツに応じた塗り」についてヒューズ氏に語ってもらう。