大手ファウンドリの台湾TSMCは7月29日(台湾時間)、2010年第2四半期の決算概要を発表した。売上高は第1四半期終了時のガイダンスとして提示した1000~1020億NTドルを上回る、前年同期比41.4%増となる1049億6000万NTドルとなり、Gross Margin(売上高総利益率)は49.5%、Operating Margin(売上高営業利益率)も38.6%と高い値を示した。また、200mm換算でのウェハの出荷枚数は3カ月間で292万7000枚となった。

TSMCの2010年第2四半期の決算概要

売上高のアプリケーション別比率は、コミュニケーションが41%で売上高は前四半期比で22%増となった。コンピュータの比率は29%で、売上高は同1%増となった。そしてコンシューマの比率が15%、売上高は同26%増、産業/その他の比率は15%となった。

また、プロセス別の売り上げ比率は最先端となる40nmが16%、65nmが27%とこの1つの先端プロセスで40%を超すまでになっており、90nmが16%、0.11/0.13μmが13%、0.15/0.18μmが17%、0.25/0.35μmが8%、0.5μm+が3%となっている。プロセス別の比率について、TSMCジャパンの代表取締役社長である小野寺誠氏は、「40nmプロセスの売り上げがじわじわと伸びてきている」と説明、全体的に先端プロセスの活用が進んできていることを強調する。

各プロセスの売り上げに占める比率。40nmプロセスの売り上げが急拡大しているのが見て取れる

同社は2010年の設備投資を当初38億ドルとしていたが、好調な受注状況を背景に積み増しを実施することを決定。この結果、半導体向けに58億ドル、ニュービジネス(太陽電池など)向けに1億ドルの合計59億ドルへと引き上げを行う。この半導体向け58億ドルの内訳は28/40/65nmプロセス向けに全体の79%を向けるほか、More Than MooreプロセスとしてAlおよび1部のCuプロセス向けに13%、そしれR&D向けに8%を振り分ける計画としている。すでに2010年1月から6月までの上半期で31億ドルの設備投資を実施しており、「今回の設備投資額引き上げに伴い、(300mmウェハ対応の)Fab12およびFab14は当初計画からさらに合計で3万枚を下半期に増強する計画へと変更された」(同)ということで、年末にはFab12で年産119万4000枚、Fab14で同131万3000枚の処理能力が整うこととなる。

旺盛な需要に応じることを目的に、先端プロセスを中心にさらなる設備投資を行うことを決定した

TSMCジャパン代表取締役社長の小野寺誠氏

「TSMCとしては、旺盛な需要に応えるために、現在できることは何でもやるという市井。設備投資も全力で行う。今回の積み増しの設備投資などは今年の需要には間に合わないが、2011年以降の長期的視点におけるコミットメントを示したもの」と小野寺社長は説明する。

こうした好調な売り上げ、設備投資規模の拡大の背景の1つとして日本地域での躍進もあると小野寺社長は説明する。

既報のとおりルネサス エレクトロニクスが28nmプロセスの自社製造を凍結、TSMCなど外部ファウンドリを活用することを発表しているが、「今後もそうした先端プロセスのアウトソーシングは加速していく」(同)とし、「ファウンドリの活用方法として、従来の不足分だけを作らせるビジネスモデルから、今後は始めからファウンドリに作らせるというモデルへと転換が進み、日本でもファウンドリが製造戦略のコアとして位置づけられることになる」(同)との見かたを示した。

すでに日本でも日本法人設立後のテープアウト件数は累計で1100件を超え、もうすぐ1200件に到達するという状況。2010年上半期では45/40nm、65nmプロセスのテープアウトの比率が増加。合計で25%程度に達し、売り上げに占める比率はこの2つで60%超、90%程度が0.13μm以下のCu配線を用いたプロセスとなっているという。

日本市場におけるプロセス別の量産テープ構成比の推移(左)と、売り上げに占めるプロセスの比率の推移(右)。これを見ると、2010年上半期は45/40nmプロセスのテープアウト数は1割程度だが、その売上高比率は4割と、非常に高い割合を占めていることがうかがえる

売上高もワールドワイドで伸びているなか、日本の占める比率が2010年第2四半期には5%に到達。「これまでは市況の上がり下がりの影響で日本地域の比率も増減あったが、2010年に入って徐々に増加傾向になっており、伸長率も他の地域よりも高い数値を示している」とし、その背景には、IDMのファウンドリ活用が増えてきていることを挙げた。

日本市場におけるプロセス別売り上げ金額推移(左)は、金額そのものは隠されているが、リーマンショック以降に下がった市場が2009年第1四半期をボトムに回復し、しかもその中において先端プロセスの比率が増えていることを示している。また、それにともない、TSMCの全社売り上げに占める日本の比率も5%まで上昇してきている。この背景には、IDMのビジネスモデルがよりファウンドリに依存するというものへとシフトしてきているということがあるものと推測される

なお、TSMCジャパンでは2010年下半期の重点施策として、28nmプロセスを用いた製品のデザイン・ウィン、複数カスタマと次世代技術における協業体制の構築、差別化された既存技術のデザイン・ウィンの3つを掲げ、積極的な展開を図っていくことを目指すとしている。中でも28nmプロセスについては、コンシューマ、通信、ハイエンドサーバ向けCPUなどの分野で話し合いが進められており、より日本メーカーの強みを出すための手伝いができれば、としている。

2010年第3四半期の業績ガイダンス。売り上げ規模は第2四半期よりもさらに上昇することが見込まれている