パナソニックは7月29日、パナソニック電工と三洋電機を完全子会社化することで合意したことを発表した。これに伴い、同日パナソニックの代表取締役社長である大坪文雄氏、パナソニック電工の代表取締役社長である長榮周作氏、三洋電機の代表取締役社長である佐野精一郎氏による共同記者会見が大阪で開催された(東京は中継)。同会見では、完全子会社化の目的、概要、今後の取り組みなどについて説明が行われた。
今回の完全子会社化の目的については、大坪氏が冒頭に説明した。「2004年にパナソニック電工を、2009年に三洋電機を連結子会社とし、3社で経営戦略を共有しながら事業を進めてきたが、市場を取り巻く環境が激変した。具体的には、新興国の成長による市場拡大、中国・台湾・韓国との競争の激化などだ。こうした変化に対応しつつ、中期計画"Green Transformation 2012"を達成し、創業100周年ビジョンに掲げる"エレクトロニクスNo.1の『環境革新企業』"を実現するには、意思決定の迅速化とグループシナジーの創出が必要だった」
以下、記者会見で行われたQ&Aを紹介する。
--今回の完全子会社化を決めたのかはいつか? また、なぜこのタイミングで行ったのか?--
大坪氏: 株主総会が終了した後にお二方に話した。その場で前向きな返答をもらい、7月以降に具体的な話し合いに入った。また、グローバルな競争相手を見れば見るほど、成長や革新があることがわかった。こうした変革には、3社のコラボレーションでは太刀打ちできない。世界の同業他社のスピードを100メートル走とたとえるなら、われわれは中距離走のスピードと言える。世界の競合に勝つには、思い切った策を打つしかなかった。
また、3社の強みをフル活用すれば、世界で勝てる企業になれるはずだ。完全子会社化に伴う株式の最大買付総額は8,000億円に上るが、うち500億円は内部の純利益となる。また、3社のシナジーによって600億円の営業利益が見込まれ、この半分の300億円は純利益と見なせる。8,000億円の10%に相当する500億円と300億円を足した800億円が純利益となり、これは合理的な判断と言える。
--完全子会社でなければできないこととは、具体的には何か?--
大坪氏: これまで、50%超の子会社である2社とはコラボレーションを行ってきたが、そこでは3社の独自性を尊重しながらやってきた。しかし、それではどうしても遅れが出てしまう。そこで、100%子会社化することで、3社一丸となってスピード感を出したかった。
--「創業100周年の2018年に世界でナンバーワンのエレクトロニクス企業を目指す」ことを標榜しているが、今回の完全子会社化により、国際競争力としてどのような点で強くなるのか?--
大坪氏: パナソニックは国内と海外でバランスの取れたビジネスをしているので、海外の売上を増やしていく必要がある。三洋はパナソニックとは異なる手法で海外でのビジネスを展開している。電工は国内ビジネスのウェイトが高いが施工・プランニングという強みを持っている。これらの強みを統合すると、「オペレーション力」、「新規市場・新規事業の創出」といった点でアドバンテージを持てると思う。
--近年、リチウム電池に対する需要が高まっているが、生産体制、販売体制、研究開発の体制はどのようになるのか?--
大坪氏: 事業体制の再編は2012年1月を目途に行うが、詳細はこれからワーキンググループを作って決めていく。いずれにせよ、3社の強みを生かしつつ、グループとして最強の体制を築きたいと考えている。
自動車メーカーへの電池供給については、メーカー各社によって採用する製品が異なるので、あらゆるニーズに対応していくつもりだ。
--3社の事業・販売部門を統合・再編するということだが、人員削減は行われるのか?--
大坪氏: 当社では、リストラクチャリングを「事業構造改革」ととらえている。これから、3社の事業を机の上にズラッと並べて組み替えることで、ベストの体制を作っていく。「リストラ=人員削減」という概念は念頭にない。
ディスシナジーが発生しない事業や商品はまったく生まれないわけではないが、さまざまな対策を施すことで防いでいきたい。
--将来的に、ブランドは「Panasonic」に統一する方向ということだが、SANYOブランドの消滅に対しどう考えているか? 長年の歴史を持つ「SANYO」ブランドを愛している消費者もいるはずだが。--
大坪氏: 当初から、ブランドは「Panasonic」に統一すると明言しており、当面は、SANYOブランドの強い地域や事業では残すが、方針に変わりはない。ブランドはパナソニックグループが目指す方向を示すものであり、重要だ。具体的には、「消費者が意識することのないエコフレンドリーな商品」を目指す。われわれによって、家、ビル、空調などすべてのものを"まるごと"提供していく。これは"まるごとビジネス"という成長戦略の基盤で、わかりやすいし、ビジネスも進めやすい。
佐野氏: ワンブランド化はグループの利益の最大化をもたらすと考えている。60年続いてきたSANYOブランドが消えることに寂しさも感じるが、プロダクトブランドとして残ると考えれば、モチベーションも保てるはずだ。
--パナソニック電工、三洋電機としては今回の子会社化をどのように受け止めているのか?--
長榮氏: モラルが低下することだけはあってはならないと思っている。それも踏まえ、「これからは親も子もない」ということを社員に話した。これからは、3社が同じ目線でいかに成長戦略を描いていくかということが大切だ。
佐野氏: 2012年度以降も、三洋電機は法人として残っていくということを社員に話してある。グローバルで戦える体制を築くことが重要だ。
大坪氏は長榮氏と佐野氏の言葉を引継ぎ、「2012年1月に3社の体制が統合された時、すべての従業員が納得できる姿を描き出したい」と締めくくった。