情報通信研究機構(NICT)は7月27日、量子情報通信技術を支えるコア技術として、高検出効率のマルチチャンネル超伝導単一光子検出器(SSPD)システムの開発に成功し、1550nm通信波長帯において、市販されている半導体アバランシェ・フォトダイオード(APD)の性能を超す性能(検出効率20%、動作速度100MHz、暗計数率100Hz)を達成したことを明らかにした。
SSPDは、厚さ数nm、幅100nmほどの超伝導体細線に光ファイバから単一光子が入射すると、超伝導状態が壊れることを利用し、光子を検出しようというもの。半導体APD検出器に比べ低雑音、かつ光子の到来時間を正確に捉えることが可能なため、光子検出技術のキーデバイスとして期待されてきた。すでにNICTでも2007年9月に国産第1号のSSPDを開発していたが、都市間伝送などの長距離・高速伝送の実現や、高感度光子検出器としての実用化・製品化には、より高い検出効率と動作速度の向上が求められていた。
今回、新たに開発されたマルチチャンネル超伝導単一光子検出システムは、2年前にNICTが開発したシステムに比べて検出効率が7倍、動作速度を2倍向上、トータル性能として半導体APD比で100倍に高めることに成功した。
検出効率の向上としては、積層薄膜により構成された光キャビティを用いた新しい検出素子を開発、単層薄膜素子より7倍以上の検出効率の向上を実現した。
また、動作速度の向上では、レンズ付き光ファイバを用いることで、より小さい受光面積をもつ検出素子への集光を実現、これにより動作速度2倍向上を達成した。
加えて、システム設計の最適化により、従来の検出システムに比べ2/3に小型化することに成功。、最大6チャンネル搭載ながら、100Vの家庭用電源で駆動可能な小型冷凍機により構成され、小型化と低消費電力性の両立を実現した。
なお、NICTでは、今後、デバイスの改良とシステムの最適化を図り、さらなる高性能化(検出効率40%、動作速度1GHz)を実現することで量子暗号システムへの実用化を目指すほか、基礎科学と応用光学などさまざまな分野での実用化・製品化を目指し、規格化や標準化などの国際戦略活動を行っていくとしている。