昨年2009年10月、米ロサンゼルス市が職員3万人が利用する電子メールを含む市の業務システムをGoogle Appsで置き換える大型契約を結んだことが話題になったが、6月末の当初予定を過ぎても移行が完了せず、米GoogleとSIパートナーである米Computer Sciences Corp. (CSC)の両社が旧システムを使い続けることで発生する追加コストを弁済する必要性に迫られているという。米MarketWatchが7月23日(現地時間)に伝えている。
今回の契約は、もともと米NovellがGroupWiseで提供していた電子メールなどの市職員向けの業務システムを刷新すべく受注を行っていたもので、米Microsoftの提案を押しのける形でGoogleとCSCの2社が725万ドルで勝ち取ったものだ。大規模システムのクラウドへの移行とGoogle Appsの利用という2つの事由で注目を集めていたロサンゼルスのシステム移行契約だが、一方で顧客を失ったことになるNovellが過去にあまり実績のないシステムへの移行によるセキュリティ懸念を示すなど、移行リスクを指摘する声が少なからずあった。MicrosoftやNovellなどライバル企業によるロビー活動だけでなく、同市内部からの批判の声も受けた両社は、情報漏洩など諸処の問題が発生した場合に被害を弁済する旨の契約も同時に結んでいる。それだけに失敗の許されないシステム導入案件だったといえるのだが、結果として初の栄誉獲得でつまずく形となった。
MarketWatchによれば、6月30日のデッドラインでのシステム移行は完了せず、前述の契約によりGoogleとCSCの2社は残りのシステム移行作業費の自己負担と、Novellの旧システム継続利用で発生するコストの追加負担を同時に課せられることになった。現時点までの負担額は13万5,000ドルで、最終的な負担額は41万5,000万ドルに達する可能性があることを市の関係者へと伝えたという。
米ロサンゼルス市CTOのRandi Levin氏はさまざまな技術的問題が発生していることを認めており、「われわれは彼らの能力を過信していたこと、そして移行にかかる時間を少なく見積もりし過ぎていたこと」と原因を分析している。現行計画では、すでに1万人の職員がGoogle Appsに移行しており、8月中旬にはさらに6000人の移行が行われ、そして残りの1万3000人のロサンゼルス市警察職員の移行については現在スケジュールを調整中だという。技術的問題の1つには、以前にも警察関係者から懸念として挙げられたセキュリティリスクがあり、これが移行の障壁になっている可能性がある。