iPhoneを盗んだ強盗が、事件発生から10分程度、距離にして1km未満で警察に御用となる事件が米国であった。嘘のような本当の話だが、不幸な強盗が盗んだiPhoneは、ちょうどあるセキュリティ企業がGPSを内蔵したスマートフォンを使ったリアルタイムでの位置情報取得デモを行っていた最中だったのだ。かくして、逃走経路ダダ漏れ状態の強盗は、すぐに通報を受けた警察によってお縄になった。
事件が発生したのは7月19日(現地時間)の米カリフォルニア州サンフランシスコ市内。詳細は地元紙の米San Jose Mercury Newsと米San Francisco Chronicleが報じている。米カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を持つセキュリティ企業の米Covia LabsのCEOであるDavid Kahn氏が、サンフランシスコのSOMAエリアにあるK/F Communicationsという企業を訪問し、「Alert & Respond」というリアルタイムGPS追跡システムのデモストレーションを行っていた最中にそれは発生した。
Kahn氏が自身が所有しているiPhoneにCoviaのソフトウェアを導入し、それをアシスタントの女性スタッフに手渡して、手持ちのノートPCからその移動の軌跡を追跡できる様子を紹介するのがデモストレーションの概要だったのだが、女性スタッフがクライアントのオフィスを出て道を数ブロック移動したところ、突如ターゲットの移動スピードが猛ダッシュしているかのように急激にアップしたのだという。女性はこの時点ですでにiPhoneを持っておらず、近付いてきた自転車強盗によってすでに持ち去られていたようだ。女性スタッフはすぐにクライアントとボスのいるオフィスへと戻り、警察へと通報、リアルタイムで逃走経路が把握されていた強盗はものの10分もしないうちに御用となった。
逮捕されたのはHoratio Toure (31)という名前の市内在住者。現在、重窃盗罪と盗難物保持の容疑で拘置所に収監されているという。この犯人の逃走経路を記した地図は、前述San Jose Mercury Newsのサイトに記されている。本当にごくわずかな距離だ。以前にも「Find My iPhone」機能を使ってiPhoneを盗んだ強盗を追い詰めた被害者がいたが、まさに同じ状態を再現したものとなった。
この様子をKahn氏は「まるでセキュリティ訓練中に押し入った銀行強盗のよう」と表現している。Coviaは主に政府組織や軍関係者などを対象に、スタッフのリアルタイム位置情報を取得し、通常の行動パターンや何かトラブルがあった際への対応を念頭においたソリューションを開発しているという。今回のGPS追跡ソリューションが大きな効果を持っており、図らずも同社の名前と製品の最大のアピールとなったわけだ。GPS付き携帯やスマートフォンの有用性を示している。また同氏によれば、今回は使われることはなかったものの、盗まれたスマートフォンのマイクやカメラ機能を強制的にオンにして、周囲の情報を探る機能もあるという。