三菱電機は7月21日、オンデマンドITサービス「DIAXaaS提供開始XaaS(ダイヤエクサース)」の提供を開始した。「セキュリティを何よりも重要視したクラウドサービス」(同社 常務執行役 インフォメーションシステム事業推進本部長 黒田健兒氏)と位置づけており、医療、金融などセキュリティがクラウド移行への課題となっていた業種/業界をメインターゲットとする。

今回発表されたDIAXaaSのサービスは以下の4つ。

  • オンデマンド電子署名サービス @Sign on Demand … 医療向けのセキュリティレベルを満たす電子署名サービス。提供元はJapanNet、提供開始は2010年度下期予定、価格は個別見積
  • IaaS型プラットフォームサービス Value Platform Demand … 24時間365日有人の耐震データセンターを活用した企業向けプラットフォーム。提供元は三菱電機情報ネットワーク(MIND)、提供時期は9月、価格は月額3万1,500円から
  • オンデマンド基盤構築ソリューション Fine Platform Solutions … データセンター運営事業者などに向けたオンデマンド基盤構築サービス。提供元は三菱電機インフォメーションテクノロジー(MDIT)、提供開始は7月21日、価格は個別見積
  • ITサービスインテグレーション BizFLEX … 企業グループに安全性の高いSaaS型業務システムをワンストップで提供するSIer向けのソリューション。提供元は三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)、提供開始は7月21日、価格は個別見積

このほか、三菱電機の既存クラウドサービスである「SaaS型Webセキュリティ診断サービス WebMinder on Demand」「FAX-OCRサービス MELFOS on Demand」がDIAXaaSに含まれる。

三菱電機 常務執行役 インフォメーションシステム事業推進本部長 黒田健兒氏。DIAXaaSではセキュリティを何より重視するため「雲のむこう(=クラウド)には平文を置かない。データセンター内のデータはすべて暗号化している」という

DIAXaaSの特徴は、高いセキュリティレベルと、データセンターの安全性だ。黒田氏は「2014年にはクラウド市場の規模は1,400億円ほどになると予測されているが、潜在的な市場規模は2兆円にも上る。つまり期待ほど成長できていないということになる。その理由は、多くの顧客がクラウド環境のセキュリティに対して懸念を抱いているから」と語り、とくに金融、医療といった業界ではセキュリティが担保されなければクラウドへの移行は進まないとする。加えて「日本の顧客はデータセンターに対する要求も高く、耐震性などの安全性はもちろんのこと、データセンターが"どこにあるか"が非常に重要。日本の法の下でビジネスをするなら、データは国内になければならない、という考え方が強い」という。したがってDIAXaaSでは、データ/通信の暗号化はもとより、通信の二重保護、タイムスタンプ付き電子署名による改竄対策、高度ID管理によるなりすまし防止など、セキュリティ管理を徹底しているほか、24/365で有人監視を行うデータセンターを都内に3カ所設置しているという。「データセンターを海外に置くつもりはまったくない。"自転車で行けるデータセンター"をイメージしている」(黒田氏)

DIAXaaSのサービス基盤

4つの新サービスの中でも、同社独自といえるのが@Sign on Demandだろう。厳密な本人確認とプライバシー保護が求められる医療情報をクラウドで扱うために、総務省が定めた「ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(2009.7)」に準拠、HISPRO(保健医療福祉情報安全管理適合性評価協会)認定セキュアネットワークを使用するなど、一定レベル以上の基準や規格に沿っているだけでなく、厚生労働省が現在も実施している「社会保障カード(仮称)の制度設計に向けた検討のための実証事業(自宅から診療情報や年金記録の閲覧を可能にするサービス、一部地域で実施中)」で実績を積んだ認証技術(二要素認証、高度ID管理)を使用している。

医療向けのきびしいセキュリティレベルをクリアすることで紙の紹介状を電子化することも可能に

DIAXaaSでは、2,015年度にアプリケーションおよびプラットフォーム事業で350億円、構築/支援事業で150億円、合計500億円の売上を目指すという(現在の事業規模は約100億円)。黒田氏は、医療、金融のほかにも「企業の環境対策や省エネに関する業務やをSaaSで、という動きが今後出てくると思われる。企業にとって環境にかかわる業務は"やらなければいけないことだが、かなりの負担"となる部分。そこをクラウドでさばくというビジネスモデルは近いうちに出てくるのでは」とし、たとえばビル管理会社などでそういったビジネスが展開できる可能性はあると語る。また、他社との連携に関しては「当面はまったく考えていない」とした。