NECと住友林業は7月20日、住宅業界向けクラウドサービス事業において協業することで合意したことを発表した。これによりNECは、工務店や建材納材店、設計事務所などの住宅関連事業者向けの業務システムをクラウドサービス「JHOP(Japan Housing Open Platform)」として販売を行う。2010年10月から、物流システム・簡易プラン作成CADのSaaS型提供を開始し、順次、バーチャル展示場・電子カタログ・プラン集などの家作りに関する情報提供や、構造設計CAD、実行予算、販売管理、工事/資材発注、工程管理などの業務システムをSaaS型として提供していくとしている。
JHOPは、住友林業が有する住宅に関わるビジネス/業務ノウハウ、販売チャネルと、NECの住宅業界向けソリューション力やクラウドサービス関連の技術を組合わせることで、新たなビジネスモデル開発を目指し、住宅関連事業者の業務効率化と、新たなビジネスマーケット創出を図り、業界活性かを目指そうというもの。
NECやJHOPパートナーが有する住宅業界向けアプリケーションを、NECのデータセンターに設置したクラウドサービス基盤から提供し、住宅建築の各プロセス(プラン作成/概算見積もり、設計、工事工程計画/積算、施工、アフター/リフォーム)において必要となる、簡易プラン作成CAD、プレゼン・意匠CAD、構造設計CAD、積算・実行システム、工事/資材発注システム、工程管理システム、物流システムなどを順次提供していくことが計画されている。
また、各サービスはSaaS型として、必要な分だけ利用できるよう、伝票や棟単位の重量課金制を設定して、安価に活用できるようにしたという。
さらに、地域の建材納材点が、地域ごとの商習慣や事業者構造に応じて、ITサービスと役務を最適な組み合わせることも可能だという。
住友林業の執行役員である坂直氏。クラウドサービスを活用してもらうことで、大工の復権を図りたいという |
住友林業の執行役員である坂直氏は、NECとの協業理由について、「リーマンショック以降、住宅市場は冷え込んでおり、2009年は40年ぶりに着工件数は80万件を割った。2010年も83万個程度と見られており、その後も80万から85万件程度の推移が目されている。工務店直接が5%、ビルダーが25%、大手系が70%の割合だが、ビルダーも大手も工務店を活用している。工務店の発展なくして、業界の発展はないと感じている。量から質への時代となり、新たな業界活性化手法が求められていた」と説明する。
NECの執行役員である龍野康次郎氏 |
また、NECの執行役員である龍野康次郎氏は、JHOPで狙うビジネスモデルについて、「地域ごとに多くの分野に多くのプレーヤがサービスを提供している。そうした業界に対し、今まで情報システム、特にCADを中心としたメーカーなどにも参加してもらい、総合的なSaaSとしてサービスの提供を図って行き、地域に密着したプレーヤに情報提供の窓口になってもらう。そして、そういうプレーヤに中心となって、サービスの活用をしてもらうことで、効率化とコスト低減を狙っていく」とし、価格としても1発注200円程度を想定、「中規模の工務店程度で、電子発注による印紙の削減なども含めて、1棟あたりのIT負担を従来の半分にしたい」と、低コストを強調した。
すでに先行パートナーとして、シーピーユー、日本ユニシス・エクセリューションズ、DTSの3社が参加を表明しており、NECと住友林業の2社では、これらパートナーの拡大を図るなどを行っていくことで、同ソリューションを2014年度に工務店3万店、10万棟への展開を目指すとしている。