三洋電機は7月15日、同社の半導体製造子会社の三洋半導体および三洋電機の所有する半導体関連の資産に関し、ON Semiconductorへの現金および株式を対価にした譲渡を行うことで最終合意に達したことを発表した。

譲渡額は約330億円(約3億6,600万ドル)に契約書で合意された調整を行った金額となる。具体的には、現金が約1億2,900万ドル(約116億円)と、約2億3,800万ドル(約214億円)相当のON Semiconductorの普通株式によって提供され、これにより三洋電機はON Semiconductorの発行済み普通株式の約7~8%(完全希薄化後)を取得することとなる。ただし、ON Semiconductorは、2010年12月末までのクロージング期間において、対価をすべて現金で支払うオプションを有しているという。

ON Semiconductorは三洋半導体を買収することで、事業規模が半導体デバイスメーカーとしてTop20位以内、ディスクリートメーカーのみで見ればTOP5位以内に入る規模の企業となる

三洋電機 代表取締役副社長の古池進氏

また、買収手続きは各種クロージング条件ならびに規制機関の承認を条件としており、両社はクロージングまでにかかる費用と手続きに関わる費用をそれぞれ負担する予定だが、現時点での費用総額は未定としている。

これにより三洋半導体はON Semiconductorの1部門となるが、譲渡完了後3年間は「カスタマへの影響もあることから、三洋のブランド名を使用する予定」(三洋電機 代表取締役副社長の古池進氏)とするほか、「予想以上に早く契約が進んでしまったこともあり、当面は三洋半導体は独立した子会社のままの状態を維持し、そのポリシーなどは継続していくつもり」(ON Semiconductor CEOのKeith Jackson氏)とし、雇用なども当面は維持していくとした。

三洋半導体 代表取締役社長の田端輝夫氏

ただし、「まだ、三洋半導体の製造装置がON Semiconductorのラインナップに対応できるかどうかなどのチェックも終わってないというよりも、ON Semiconducto側の生産ラインの中身も理解できていない状況ということもあり、拠点再編などは現状考えられる段階にない。しかし、グローバルで見た場合の生産効率などに問題があれば、そうしたことも将来的には検討されていく可能性はある」(三洋半導体 代表取締役社長の田端輝夫氏)とする。

三洋電機が、三洋半導体の売却の検討を具体的に模索し始めたのは、パナソニックのTOBが終了した直後ころからで、「選択と集中の1つの方向として検討してきた。パナソニック(セミコンダクター社)に合流することも考えると、製品の補完という意味や(三洋半導体が)パワー半導体に注力していく方向性を考えると、シナジーがないこともないが程度で、似たような方向性を打ち出しているON Semiconductorと関係を構築したほうがプラスになると判断した。これは三洋電機の目指す方向性と三洋半導体の目指す方向性が必ずしも一致していなかったことも起因している」と古池氏は、その経緯を説明する。

三洋半導体の概要

アナログ半導体メーカーは国内外に多数存在しているが、何故ON Semiconductorであったのか。それについて田端氏は、「三洋半導体の事業は"ディスクリート""ハイブリッドIC(HIC)""バイポーラリニアIC""システムLSI"の4つがメイン。その4つすべてが欲しいと言ったのがON Semiconductorのみであり、彼らは今以上に、4つのビジネスを活用できることを強調した」と、他社やファンドが事業の1部分しか興味を示さなかったのに対し、ON Semiconductorのみがすべてを一括して活用する方向性を示したことを強調する。

ON Semiconductor CEOのKeith Jackson氏

三洋半導体を傘下に収めることで、ON Semiconductorとしては、「商品の補完が可能となるほか、海外での認知度が低い三洋半導体の製品をグローバルに展開できるようになるほか、ON Semiconductorの製品を本格的に日本市場で売る体制が構築できるようになる。収益性については、現状でイーブンになっており、今後、それを高めていくことができると考えている」(Kieth氏)とし、これが戦略的な一歩であり、両社のカスタマに向かって、強固なポートフォリオを提供できるようになると説明する。

その三洋半導体のグローバルへの展開としては、「アジア、日本地域に強い三洋半導体と、欧米地域に強いON Semiconductorのそれぞれの販売網を活用することで、それぞれの地域に応じた戦略が立てられるようになるほか、三洋半導体のカスタムIC技術と、ON Semiconductorの汎用IC技術を組み合わせ、カスタムICの周辺に汎用ICを配置するなどのソリューションとしての提供が可能となるなどの、デバイス単体ではなく、システムとして製品が提供できるようになる」(田端氏)ことにより差別化が可能となり、「2004年の中越地震の影響で体力がなくなり、システムLSIからアナログにシフトするなどの策を講じてきた。その間もずっとグローバルに進出したいと考えてきたが、いかんせん体力が不足するなど、力不足を感じていた。今回、ON Semiconductorの力により、グローバルに進出することができるようになる」(同)と、相当の悲願であったことをうかがわせた。

なお、ON Semiconductorでも三洋電機が三洋半導体に対し継続してきた構造改革の継続と拡大を予定しており、三洋電機も三洋半導体の収益性改善のために、これを支援していくことで合意しているとするほか、今後ON Semiconductorが進めていく三洋半導体の製造および業務改善についても支援を行っていくとしているが、具体的な方針などについては、今後、協議などを行って決定していくとしている。

右から握手を交わす古池氏、Kieth氏、田端氏