三菱電機は7月15日、パワーデバイス需要の増加に対応するため、同社のパワーデバイスの生産能力を2011年度にはウェハ工程(前工程)の200mmの能力を2009年度比2.5倍に引き上げることを発表した。また、併せてアセンブリ・テスト工程(後工程)の生産能力も増強することを発表した。
2010年度の設備投資額は前工程に約65億円、後工程は、民生用途向けに約15億円、自動車用途に約10億円、産業用途に約10億円の合計約100億円を計画。これにより、2011年4月時点の生産能力は2009年9月比で、前工程として200mmの能力が2.5倍になるほか、民生用途(後工程)で2.6倍、自動車用途(後工程)で2.3倍、産業用途(後工程)で1.4倍に引き上げられることとなる。
同社は創立100周年となる2021年に向けて「環境ビジョン2021」を策定、その中で環境関連事業の売上高を2015年度には現在の約2倍となる1兆3000億円、そのうちパワーデバイス事業では2010年度で1080億円、2015年度で1500億円の達成を目指す計画を立てており、電子化を進めることでCO2を進めていくとしている。
「パワーデバイス事業のキーワードは、"シナジー""イノベーション""グローバル"の3つ。これを武器に積極的に事業を推進していくことを目指している」(三菱電機 専務執行役 半導体・デバイス事業本部長の久間和生氏)としており、売り上げ達成に向けて積極的な設備投資および200mmウェハ化、SiCなどの先端材料/プロセス技術などを進めていくとしている。
このため、グローバルでの販売体制拡充に加え、生産や開発・設計などの拡充も進めており、「国内外問わず、開発拠点なども必要に応じて拡充していく」(同)とする。
また、先端材料/プロセス技術の実用化も積極的に進めていく計画で、「先端IGBTの開発と、SiCパワーデバイスの開発を平行して行っていく」(同)とし、「事業を成長させていくために必要なのは、性能とコストを超えるデバイスをきっちりと作っていくこと。それについては"持続的イノベーション"ということで、デバイス構造の改良や薄膜材料の変更、プロセス技術の進化によりIGBTの差別化を進めていく」(同)とするほか、「ブラウン管が一気にFPDにとって変わったように、"破壊的イノベーション"が起きた時にそれまでの技術だけでは対応が難しい。そのためSiCなどの新規技術を平行に行うことで、パラダイムシフトが生じた時に柔軟に対応できるように準備を進めている」(同)とその意味を説明した。
同社のIGBTは2010年中に第6世代プロセスとなるCSTBT 0.4μm/LPT型の量産開始予定で、現在はサンプル出荷を行っている。また、2013年度以降の実用化を目指した第7世代プロセスの開発が進められており、プロセスの0.25/0.2μm化や薄ウェハ化などによる低損失化を実現する計画。「目指すのはチップサイズの低減と電力損失の低減」(同)であり、従来のバイポーラ型の電力損失を100とした場合、第1世代で70に低減、第6世代では24まで低減することに成功している。
一方の新材料となるSiCについては、2009年度の実証値で第5世代IGBTの電力損失を100とした場合で10まで低減することに成功しており、2009年12月より実用化開発として同社福岡地区に月産3000万の処理能力を持つ125mm(4インチ)ウェハ開発ラインを構築、2010年度より社内向けサンプルの提供を開始し、2011年度からは量産を計画している。当初は「SiのIGBTとSiCのダイオードによるハイブリッドなインバータの生産を計画。2013年ころをめどにSiCのMOSFETとダイオードによるフルSiC化を狙いたい」(同)としている。
「三菱電機はオープンイノベーション戦略を推進しており、社内の各事業との連携による"社内オープンイノベーション"として製品にマッチした各種デバイスの開発などを進めているほか、大学や研究所などとの"社外オープンイノベーション"として、各種技術の開発を進めており、今後も積極的に横断的な連携を進めていく」(同)とした。