日立製作所とKDDIは7月12日、携帯電話にUHF帯RFIDリーダ/ライタを搭載したユビキタス端末技術を開発、2010年11月もしくは12月ころをめどに、大型商用施設でのユーザー参加型実証実験の実施を計画していることを発表した。

同技術は、KDDIの法人向け携帯電話「E05SH」に、日立が開発したUHF帯RFIDリーダ/ライタをSDIOモジュールとして実装することで可能となるもので、日立がリーダ/ライタの小型化、低消費電力化の実現に向け専用LSIとアンテナモジュール技術を開発した。

左が今回開発されたSDIOモジュール型UHF帯RFIDリーダ/ライタ、右はKDDIの法人向け携帯電話「E05SH」。E05SHは背面にSDIO用スロットがあり、モジュールを内蔵することができるため、見た目には変化が見えないのが特徴。また、特定業者のみがモジュールを交換できるようにすることなども可能だという

SDIOモジュールは、通信距離が数cmのパッシブ型と通信距離が10数mのアクティブ型双方に対応可能で、パッシブ型は国際標準規格である「ISO/IEC18000-6 Type-C」に準拠、海外での利用も可能なほか、アクティブ型には独自プロトコルを採用。これにより、両方式を同時に活用したサービスの提供も可能となる。

一方、KDDIでは、携帯電話へのRFIDリーダ/ライタ実装に向けた携帯電話のソフトウェアの拡張や、RFIDタグの読み書きを制御するためのミドルウェア開発などを行ったほか、さまざまな情報にアクセスすることが可能なアプリケーションの開発なども行った。

日立とKDDIの開発区分

新たに開発された専用LSIは、RF回路および論理回路LSI、ならびにアクティブ機能向け電力制御回路LSI、送受信制御回路LSIを1チップ化したもので、これにより従来機種として、日立が製品化している特定小電力のリーダ/ライタモジュールの最大消費電流400mAに比べて、半分以下となる最大消費電流145mAを実現している。ただし、「具体的な製品化というわけではないため、実証実験の結果次第ではさらなる低消費電力化に向けた取り組みなどが行われる可能性もある」(日立製作所 情報・通信システム社 セキュリティ・トレーサビリティ事業部 開発本部開発部長の松本健司氏)という。

また、UHF帯として860MHz~960MHzの帯域に対応。これにより、さまざまな国や電波法に対応できるようになり、「IDデータを受信することで、それぞれの要件に応じた変更が可能」(同)となるという。

開発したUHF帯RFIDリーダ/ライタの概要

同モジュールを搭載したユビキタス端末の活用シーンとしては、「入出庫などの"物流/物品管理"、観光地やショッピングモールなどでの"情報取得"、道案内や健康関連ソリューションなどの"ライフサポート"、子どもやお年寄りの移動などを見守る"安全・安心"の4つをメインシーンとして考えている」(KDDI 技術統括本部 ネットワーク技術本部 技術戦略部 担当部長 猪澤伸梧氏)としており、さまざまなサービスに対応するためのID解決機能を搭載したサービスの中継機能や、その後段のネットワークの先に存在する各種サービスを組み合わせたサービスフレームワーク全体を情報通信サービスとして提供していく計画。

ユビキタス端末のサービス活用シーンおよびサービスフレームワーク

なお、実証実験の場所やバックヤードにおける入出庫などのみを行うのか、一般消費者などを含めた形で実施するのかといった詳細に関しては、今後関連各所と協議を進めていく予定としている。また、これらモジュールの開発や実証実験に関しては、2008年度から進められている総務省の委託研究「ユビキタス端末技術の研究開発」プロジェクトの成果物であり、同プロジェクトには2社のほかパナソニック、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(NTTドコモ)が参加。パナソニックとNTTドコモは別端末を用いてアクティブ型をメインとした研究を進めている状況という。