本稿では、6月23日に東京で開催された日本ネクサウェブのユーザカンファレンスにて、 関西電力の経営改革・IT本部情報通信センター 白須方崇氏が講演した内容をレポートする。
関西電力、関西エリアを中心に担当する電力会社
関西エリアを中心に電気を提供する関西電力の業務は、発電、送電、変電、配電、販売という流れになる。生活に欠かせない電気だが、顧客が電力会社と直接やりとりする機会は限られる。引っ越しの際に契約を終了したり、新しい契約の申し込みをする場合などだ。それ以外では停電や電気料金に関する問い合わせなどがある。
特に引っ越しシーズンは、コールセンターで受ける申し込み件数は膨大となる。こうした受付はそのまま顧客満足度につながるため、正確で迅速な応対が求められる。
新しい顧客応対システムへの要望
関西電力がこれまで活用してきた顧客応対システムは平成7年に開発されたもの。主にコールセンターで使われるシステムで、2種類のアプリケーションで構築されている。基本的にはクライアント/サーバシステムで構築されたVisual Basicアプリケーションを使うが、場合によってはホスト画面に切り替えて使用してきた。切り替えが発生するため若干操作は煩雑だ。また、次のような状況の変化もあり新しいシステムへの切り替え要求が高まっていたという。
- 電力自由化への対応
- 新型計量器による遠隔検針や各種サービスへの対応
- コールセンターにおけるサービスのさらなる向上
- ホスト画面とVBアプリの混在したUIの煩雑さの改善
- ホストデータベースおよびVisual Basicのサポートへの不安
新しいシステムにおける要望を整理すると次のようになったという。
- 既存のシステムと同等の操作性の提供
- 既存のシステムの2種類のUIを統合して少ない画面で作業を可能にする
- 既存のシステムと同等かそれ以上のレスポンスの実現
- システム保守作業におけるTCOの削減とシステム運用負荷の軽減
- 初めて利用する人でも扱いやすいUI
- 1つの画面でさまざまな業務に対応
こうした要望を満たすシステムを検討し、最終的にWebアプリケーションとして新しいシステムを構築する方針に固まったという。
新システムでの要求を実現するNexaweb
そこで関西電力が採用したシステムがNexawebだ。Webアプリケーションとしてシステムを開発することが可能で、既存のシステムと同等以上のUIと機能を提供する。さらに毎秒160トランザクションの負荷に耐えるシステムとなると、Nexawebが候補として残ったという。Nexawebの導入という新しい試みになるため、関西電力では次の取り組みを実施し、開発をスムーズに進められるように工夫したとしている。
- 本開発をはじめる前に一部のサブシステムを先行開発。開発プロセス、体制、生産性、品質、標準に関するノウハウを先に整理し、本開発へフィードバック
- 標準化の徹底、フレームワーク設計および構築を先行実施、コンポーネント化の推進
- フレームワークチーム、共通コンポーネント設計チーム、DAO開発チームなど専門技術が必要なチームの専業化・独立化
- 品質管理基準の策定とチェックの徹底によるシステム品質の確保
- 性能検証用プロトタイプを活用したボトルネックの洗い出しと設計へのフィードバック
Nexawebを使って開発されたシステムで実現された利点は次のとおり。
- 未経験のオペレータにも扱いやすいUIの実現と効率のいいオペレーションの実現
- Webブラウザからアクセスできるため、オペレータPCが故障した場合でも迅速に別のPCでシステムを利用
- クライアントアプリケーションのインストールが不要になったことによるシステム保守性の向上
- 従来のシステムと同等のレスポンス確保
関西電力には顧客応対システムのみならず、Visual Basicを採用して開発したシステムがほかにもある。今後はこうしたほかの既存のシステムをNexawebを活用したシステムへ置き換えていくという。