中国・上海で現在開催中の上海国際博覧会、通称"上海万博"には数多くの企業がパビリオンを出展しているが、最先端or近未来のテクノロジを体感できるスペースを提供する大手ITベンダの出展も目立つ。そのひとつである米Ciscoのパビリオンに、米NBA ロサンゼルス・レイカーズのデレック・フィッシャー選手が来場、アジア各国の数拠点をつなぎ、Ciscoの会議システム「Cisco TelePresence」で会見を行うというユニークな催しが7月5日に実施された。リアルな臨場感が持ち味のTelePresenseだが、フィッシャー選手も「新しいつながりの感覚だ! 世界をみんなで共有している感じがすごいね」と大絶賛、終始にこやかなムードで会見が進められた。
東京・六本木にあるシスコのオフィスで行われたテレプレゼンスのもよう。フィッシャー選手のいる上海と、東京、シンガポール、北京、クアラルンプール、台北、香港、バンコク、マニラの各拠点を接続し、リアルタイムで会見が行われた。ちなみにCisco TelePresenseは最大48カ所の複数拠点をつなぐことができる |
以下、フィッシャー選手と各国記者のやりとりの一部を紹介しよう。
昨シーズン(2009-2010)の優勝で思うところは?
多くの素晴らしいチームメイトと一緒に試合ができたことを誇りに思う。これまで4回、チャンピオンリング(NBAなどのプロスポーツの優勝チーム選手に贈られる記念リング)をもらっているが、次のシーズンは5回目の挑戦となるわけで、身が引き締まる思いだ。
Cisco TelePresenceのようなテクノロジはどのような影響を選手に与えているのか?
テクノロジの発展は、アスリートにとっても非常に役に立っていると思う。昔は携帯電話で試合を見るなんて考えられなかったことだが、今は移動中のバスの中でも見ることができる。チームのみんなで一緒に他のチームの試合を見ることで、チームの結束力も高まる。また、トレーニングなどでも、テクノロジによってさまざまな有効なアドバイスを得ることができる。
この会議システムのようにバーチャルな技術がもっと発達すれば、バスケットボールの試合会場に足を運ぶ人が少なくなるという危惧はあるか?
それはないね。テクノロジがリアルを凌駕するとは思わない。だが、観客に飽きられないためにも、我々アスリートはつねに発展していく(developing)ことを意識し、コンディションを完璧に整え、技術のレベルを保つ必要があるとも思う。
あなたは素晴らしいバスケットボールプレイヤーであり、そしてすばらしい父親でもある。バスケットボールと家族の間でどのようにバランスを取っているのか?
ここで強調しておきたいのは、私にとって何よりも一番大切なものは家族だということだ。バスケットボールは私の仕事だ。それは、子どもにすばらしい教育を受けさせるために必要な生活手段であり、自分自身にとって大切な要素である。だが、トッププライオリティは家族であり、バスケットボールがそれにとってかわることはない。
※ 2007年、フィッシャー選手は娘の病気治療のため、前球団のユタ・ジャズを退団し、医療機関の充実しているロサンゼルスに本拠をもつレイカーズに移籍した。
チームメイトのコービー・ブライアントはどんな人?
ひと言で言うと"ハードワーカー"だね。ずっと長い期間、驚異的な活躍を続けているすばらしい選手だ。つねに自分自身を向上させるための努力を怠らないし、チームメイトで良かったと心から思うよ。
コービーのほかに、敵じゃなくてなくてよかったという選手は?
もうすでに(2003年)引退している選手だが、ジョン・ストックトン(ユタ・ジャズ)と直接対戦しなくていいのは助かるね(笑)。スマートでタフで、本当に尊敬に値するすばらしい選手だった。
もし、あなたが1つだけ世界を変えられるとしたら何を変える?
世界を変える!? うーん…(しばらく考えて)、そうだな、バスケットボールを(米国だけじゃなく)世界で一番人気のあるスポーツにしたいね。今、サッカーのワールドカップで世界中が盛り上がっているのはすこし悔しいかな。「は? サッカーって何???」となればいいのに、とひそかに思っているよ(笑)
いままでのバスケットボール人生を振り返ってみると、どんな感じだろう?
いろいろな人に助けられて、非常に恵まれた、感動の多い(quite moving, quite exciting)人生だった。家族、コーチ、チームメイト、友人……多くの人に感謝したいと思う。ただ、私の人生はまだこれからも続く。そして人生は何が起こるかわからない。(中国でプレーする可能性は?との質問に)中国でプレー……まあ、絶対ないとは言い切れないんじゃないかな(笑)
あなたのようになりたい!という若い世代にメッセージを
ハードワークをいとわなければ、人はなりたいと思ったら何にでもなれる。何でもかなえることができる。アジアの若い人びとがバスケットボールをもっと好きになって、選手をめざす人が増えてくれれば本当にうれしいと思う。