シマンテックは8日、家庭のPCにインストールして子どものインターネット利用を保護者が確認できる「ノートン オンライン ファミリー」正式版をリリースした。子どもが安全なインターネット利用を促し、家庭でのインターネット利用の教育にも活用できるとしている。価格は無料で、同社のサイトからダウンロードできる。
子どものインターネット利用を管理できるオンライン ファミリー
オンライン ファミリーは、子どものPCもしくは子どものアカウント用にクライアントソフトをインストール。保護者側はWebベースの管理ツールを使い、子どものアカウントを作成してインターネット利用を管理する仕組み。アカウント作成時に子どもの年齢を入力すると、それにあわせて最適な管理設定を自動で適用してくれるので、すぐに利用を開始できる。
機能としては、子どもがアクセスしたWebの履歴、検索サイトでの検索履歴を監視することができる。Web履歴をみることで、子どもが閲覧したサイト、または閲覧しようとしてブロックされたサイトの履歴を確認できる。検索履歴では、検索語を記録しているため、子どもがどんなものを調べようとしているのかが分かる。
Webの管理画面。警告だけ表示する、表示をブロックする、警告もせずにアクセスしたサイトの監視だけを行うという3種類から選択できる。カテゴリなどでアクセスできるサイト、できないサイトをチェックする。基本的には、子どものプロファイル入力時に設定した年齢に応じたカ |
子どものPC利用時間を記録し、インターネットを使う時間の調節も可能で、子どものインターネット利用時間を管理するとともに、制限時間を越えた場合にそのままシャットダウンするか、そのまま利用状況を記録しながら利用を継続させるか、といった設定も行える。
ソーシャルネットワーク監視機能もあり、国内向けにミクシィ、グリーの2サイトへ対応。SNSの監視では、子どもがアカウント作成時に、自分の年齢を偽って大人として利用していないかどうかなど、アカウントの作成状況をチェックする。SNSに関してはその中での活動は監視しない。
MSN、Yahoo!、Googleといった主要なインスタントメッセージサービスにも対応。子どもがチャットでどんな会話をしているかを記録し、確認することができる。
Webサイトの閲覧では、ブロックされたサイトに子どもがアクセスしたい場合、保護者に対して接続の要求を出すことができる。保護者にはメールでその要求が届き、メールのリンクをクリックするだけで、許可、遮断を選択できる。
それに対して、子どもは親に対する接続許可の要求を送信できる |
子どもからの要求はメールで届くので、携帯などでもチェック可能。メール内のリンククリックで、要求されたサイトの内容チェックや管理サイトへのアクセスができる |
チャット監視機能では、新しい相手と会話する際に、それを遮断することもできる。サイト閲覧と同様に、子どもがチャット許可を保護者に求めることもできる。
IMで初めての相手にメッセージを送ろうとしてもそれをブロックできる。こちらも同様に子どもが要求を送れる |
そのほか、子どものPCにインストールするクライアントアプリからは、設定に応じた「家族ルール」を閲覧でき、ルールを常に確認できるので、これをもとに子どもと定期的に話し合うことを推奨している |
子どもが警告を無視する、オンライン ファミリーを停止しようとする、といったときも警告を送信するようにもできる。警告はメールで送信されるため、保護者はPCだけでなく携帯電話などでも確認でき、子どもの要求に素早く返信できる。
iPhoneやiPad、Androidのようなスマートフォンを使っていれば、管理サイトにもモバイルからアクセスできるので、より子どもを待たせずに許可や遮断を行える。
管理サイトからは詳細なレポートも閲覧でき、子どもの利用状況が時系列で表示されるので、分かりやすい。アクセスしたサイトのサムネイルも表示され、見やすさにも配慮されている。
管理画面からは、40以上に分類されたトピックやカテゴリから特定のジャンルのWeb祭との閲覧を管理でき、幼少時はサイトへのアクセスを厳しくし、高校生になったら全サイトの閲覧を許可しつつ、好ましくサイトにはフラグを立てて子どもに選択させる、といったこともできる。
WebサイトやSNS、IMでの個人情報の送信を防止したり、保護者に送信したりといった機能も備えている。
オンライン ファミリーは、Windows XP/XP Media Center Edition 2005/Vista/7に対応する。子どものPCにはクライアントアプリのノートンセーフティーマインダーをインストールする必要があるが、保護者側にはソフトは不要で、すべてWebサイトで管理できる。
無料でダウンロード提供されるほか、現在ベータテスト中の統合セキュリティソフト「Norton Internet Security(NIS) 2011」には統合され、NIS 2011から管理画面へのリンクが用意される。
親と子のコミュニケーションで安全なネット利用を
オンライン ファミリーは、米国ではすでに昨年から提供されており、利用者数は伸びているという。米SymantecインターネットセーフティアドボケートMarian Merritt氏は、同社が世界規模で実施した親子のインターネット利用に関する調査で、子どもの62%がネット利用中に「好ましくない体験」をしたと回答しており、子どもを守る必要があると指摘する。
多くの子どもがそうした体験をしているのに対し、保護者がそれに気づいていている割合は45%程度で、特に日本では、子どもが好ましくない体験をしていると考えている保護者は17%しかいなかったという。
好ましくない体験をした子どもは「心理的に重要な影響を受けている」とMerritt氏は指摘する。しかもこうした体験をした子どものうち5人に1人は恥ずかしい、公開していると感じ、10人中4人は自分の責任だと感じていたという。「大人でも責任を感じてしまうことを、子どもに感じさせるのは困ったことだ」とMerritt氏。
Merritt氏は、親が状況をきちんと理解し、子どもに意味のあるアドバイスをする必要があると話し、「家庭の中で親子が話し合う環境を作る必要がある」と強調する。
親子が話し合って、家庭のルールを決めることをMerritt氏は重視すし、単に親がルールを押し付けるのではなく、話し合うことが必要だと指摘する。Merritt氏は、技術的対策を提供するシマンテックの自分が言うのは変だが、と前置きして「技術的な対策が一番重要なのではない。親が子どもに積極的にかかわり、子どもにとって親が相談相手になれる、話し合えるようにしておくことが重要」と話している。
ネット教育アナリストの尾花紀子氏は、これまでの日本でのネット教育が、子どもを遠ざけようという論調だったのに対し、最近では「家族で話そう、ネットを賢く使おう」というように、使い方を指導する方向に来ているという。
尾花紀子氏 |
尾花氏は、大人になってからITに触れた世代と、生まれたときにはITが当たり前だった世代との世代間ギャップに触れ、「今の子どもが分からないことが、特に30代以上には分からないことがある」と指摘する |
国のIT戦略本部も、児童・生徒の情報活用能力向上を図る学校教育の環境構築を重点施策としてあげており、「使うことを前提に学ばせる」という方向性が示されていると尾花氏はいう。
内閣府の調査では、保護者にITの知識・経験がないと子どものネット利用に注意を払わない傾向が強く、知識・経験があっても6割に満たない保護者しか注意を払っていなかったという。ルールがあると考えている家庭の割合は、親よりも子どもの方が少なく、尾花氏は親が最初にルールを決めているが、徐々にルールが形骸化して子どもはなくなったと思っている、と指摘する。
「ルールは常に再確認する」と尾花氏はアドバイス。さらに家庭のルールだけでは子ども同士のトラブルにつながるとして、学校や地域ともルールをすり合わせる必要があるのだという。「小学生ではルールを守りながら使う習慣づけを、中学生はむやみに強制したり叱ったりしない、高校生では利用のノウハウをしっかり教える」と言ったように、年代に応じたルール作りの必要性を訴える。
Merritt氏は、子どものネット利用に関する教育について、「子育てのチャンスだととらえて欲しい」と話し、「例えITの知識がなくても、親は親であり、親が子どもに話しかけて興味を持てば、親子のコミュニケーションができる」と強調する。