グローバル化に伴って増えるSAPプロジェクトの見直し
IBMはSAPユーザーを支援するための施設「IBM-SAPコンピテンシー・センター」を世界30ヵ所以上に開設しているほか、専任スタッフはグローバルで2万人と、SAPビジネスを大規模に展開している。
また、日本アイ・ビー・エムは子会社、関連会社、中国法人のスタッフを含め、1,000人以上のスタッフでSAPビジネスを手がけている。常に大規模なSAPプロジェクトが30以上稼働しているという。
日本アイ・ビー・エムの執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業 Enterprise Applications-SAP担当の富永満之氏は、「SAPシステムを1度導入した企業がグローバル化に対応するために見直すプロジェクトが増えている」と話す。
「日本に加えて複数の海外拠点にSAPシステムを入れている企業では、バージョンが異なることなどの課題が持ち上がっており、見直しが行われ始めている。また、マーケットの拡大を求める日本企業にとって新興国への進出は急務となりつつあるが、そのノウハウは不足しており、サポートが必要な状況にある」
加えて、「SAPプロジェクトは変わってきている」と同氏は説明する。まず、基幹業務にパッケージを導入することに対する抵抗感がなくなってきており、SAPシステムに興味を持つ企業が増えているという。
また、グローバル化を進めるにあたってはガバナンスの確立が重要となるが、日本企業は言語の問題や考え方の違いなどから、海外法人の管理に苦労している。グローバル・ガバナンスという観点から、SAPシステムへのニーズが高まりつつあるという。
SAPシステムに最適なインフラの提供が可能
こうした状況に対し、グローバルでのサポート体制とメソドロジーをそろえているIBMは強みを持っていると言えよう。さらに、ハードウェアの開発・販売も行う同社は、SAPシステムに特化したインフラを構築できるという点でもアドバンテージを持っている。
世界170ヵ国にオフィスを構える同社は現在、グローバル全体で人・プロセス・システムを統合するという社内プロジェクトを遂行している。
日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業 コンサルティングサービス Enterprise Applicationsデリバリー テクニカルインフラストラクチャーデベロップメント パートナー 垂水宏明氏 |
グローバル・ビジネス・サービス事業 コンサルティングサービス Enterprise Applicationsデリバリー テクニカルインフラストラクチャーデベロップメント パートナーの垂水宏明氏は、同プロジェクトについてこう語る。
「このプロジェクトのシステムのコアはグローバルで1インスタンスのSAPである。SAPクライアントとインスタンスを統合するために、当社のハードウェア、ミドルウェア、ネットワークを最適な形でチューニングしている」
例えばネットワークは、国によって異なるビジネスアワー、トランザクションやマスタデータの量などの条件をもとに、ネットワークの最適化が行われる。オフィスの所在地は170ヵ国にわたるため、かなり緻密な設計が求められる。同様のチューニングはサーバでも行われている。
さらに、在庫分析モデルなど、SAPシステムと連携させるシステムのモデリングやビジネスアナリティクスといった技術について、全世界3,000名の研究者の先進的な研究を生かすことができる。「SAPシステムを導入したあとの次の一手を考えることが大切」と、富永氏は語る。
こうしたハードウェアやソフトウェアに関する技術サポートは、総合ITベンダーの同社ならではの強みと言える。