東京 表参道に開かれていたアドビの期間限定ギャラリー「station 5」にて、「自作自演を始めたアーティストたちの現在」というセミナーが開催された。司会進行は音楽コミュニティーサイト「MySpace」の宮崎敬太氏(編集チーム副編集長)。日頃から多くのアーティストを見続けている宮崎氏が、最近のアーティスト事情について語った。

宮崎氏によると、最近のアーティストは楽曲だけでなく、アーティスト写真やCDジャケット、PVまでも自分たちで作ってしまうという人たちが増えてきているそうだ。宮崎氏は「PVの制作費用は低予算でも、クオリティが高かったりアイデアのすばらしさで評価されているアーティストが多い」と音楽業界の現状を話す。また、インターネットを使って海外のクリエイターとのコラボレーションをしているアーティストも出てきていると言う。 セミナー会場では、宮崎氏が「最近気になった」というアーティストのPVを紹介した。

セミナーで紹介されたアーティストたち

神聖かまってちゃん 「ロックンロールは鳴りやまないっ」

PSG 「かみさま~M.O.S.I」

SIMI LAB 「WALKMAN」

Ovall 「Supalover」

SOUR 「日々の音色」

「Spangle call Lilli line」と「80kidz」が登場

セミナーの後半では、MySpaceやYouTubeでも人気上昇中の2組のアーティスト「Spangle call Lilli line」「80kidz」が登場し、宮崎氏とのトークショウが行なわれた。Spangle call Lilli lineのジャケットグラフィックはメンバーの藤枝憲氏が担当している。主に使用しているツールは「Photoshop」と「Illustrator」。藤枝氏は「『Photoshop』はたぶん12年くらい前から使っています。学生時代も入れたらもっと長いかもしれない。当時、学校に1台だけMacが来たんですよ。貴重なパソコンだったので、それを使うには先生から鍵をもらう必要があったんです」と、Photoshopとの出会いを語った。

Spangle call Lilli lineのMySpaceページ。会場では「eye」のPVが上映された。メンバーは藤枝憲、笹原清明、大坪加奈の3人。藤枝氏はデザイナーで笹原氏はプロのカメラマンという顔も持つ

80kidzのメンバーであり、デザイン担当 JUN氏がデザインに興味を持ったきっかけは、「父親が高校2年生のときに仕事用のMacを買ってきたから」と言う。そして、高校生のうちにデザイン系の大学に進もうと決心したそうだ。このような過去を持つJUN氏は、80kidzではジャケット、フライヤー、VJなどのグラフィック関係を手がけるようになった。ジャケットのグラフィックを自作することに関してJUN氏は、「イラストを外注する場合は収録曲を早く仕上げなければならない。でも、ジャケットも自分で作るならば、時間はいくらでも自由に使える」とその利点を語った。

JUNとALI&のユニット80kidzのMySpaceページ。会場では「SPOILED BOY」のPVが公開された。80kidzの活動はツアーやライブ、CM音楽まで多岐にわたる

音楽アーティストにも欠かせない「Illustrator CS5」と「After Effects CS5」

セミナーの最後には、「Illustrator CS5」と「After Effects CS5」のデモンストレーションが行なわれた。どちらもCDジャケットやPV制作に欠かせないツールだ。Illustrator CS5では、遠近法を使って建物のイラストを描く方法を紹介。After Effects CS5では、「ロトブラシ」機能で人物を切り抜く機能が披露された。デモを見終わった後に藤枝氏は、「いまはツールが進化しているので、作品を簡単に作れる時代。必要なのはセンスだけ」とコメント。そしてJUN氏は、「昔はVJをプレイするのも大変だった。でも、いまは『After Effects』みたいなツールを使えばラクに映像素材も作れる」と感想を述べた。

「Illustrator CS5」から加わった遠近グリッド。パースイラストを簡単に作成できる

いままで困難とされていた人物の切り抜きを一瞬で可能にした「After Effects CS5」のロトブラシ機能

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