宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、5月21日に打ち上げた金星探査機「あかつき」が6月28日、地球から1460万km、太陽から1.06天文単位の距離において500Nの軌道制御エンジン(OME)の噴射を行い、あかつきのために新たに国内で開発された窒化珪素(Si3N4)製セラミックスラスタの世界初の軌道上実証に成功したことを発表した。

同スラスタはヒドラジンと四酸化二窒素を燃料とする液体ロケットエンジンで、主に金星軌道投入時の逆噴射に使われるもの。

今回軌道上実証に成功した軌道投入用500N級セラミックスラスタの搭載位置(提供:JAXA)

今回の噴射は金星への接近条件を調整するためだけでなく、金星周回軌道投入の際のエンジンの出力特性を把握するためにも不可欠な作業で、その後実施したJAXA内之浦局、同臼田局、NASA深宇宙ネットワーク(DSN:Deep Space Network)局による軌道追跡の結果、13秒間のOMEの燃焼で約12m/sの速度修正というほぼ計画通りの軌道制御が行われたことが確認された。

次回の軌道制御(微調整)は2010年11月上旬頃に実施予定で、金星への最接近および金星周回軌道への投入は12月7日となる予定。

なお、あかつき本体および搭載機器の状態は正常で、打ち上げ当日夜に初期機能確認を終えた紫外線イメージャ(UVI)、1μmカメラ(IR1)、中間赤外カメラ(LIR)に加え、新たに超高安定発振器(USO)についても予定どおりの周波数安定度が達成できていることが確認されたという。