エプソンは、産業用インクジェットデジタルラベル印刷機「SurePress L-4033A」を10月から販売すると発表した。本体価格、インク価格ともオープンプライスだが、市場想定価格は本体が2,500~3,000万円程度、インクは1本あたり20,000円台中盤程度。定期交換部品付き年間保守料金は200万円を予定し、販売目標は3年間で100台。

「SurePress L-4033A」は、長さ約5m、重量約1.8tのため、発表会場へ搬入できず、プリントヘッドのみの展示となっていた

印刷サンプル。小ロットでありながら高画質印刷を実現できる

こちらも印刷サンプル。和紙をはじめ、さまざまな種類の紙に対応している

C&I戦略について説明するセイコーエプソン 情報画像事業本部 副事業本部長 三村孝雄氏

発表会ではまず、セイコーエプソン 情報画像事業本部 副事業本部長 三村孝雄氏が、エプソンのC&I戦略について説明した。エプソンは、2009年3月に長期ビジョン「SE15」を発表。省/小/精の技術をきわめてプラットフォーム化し、強い事業の集合体となり、世界中のユーザーに感動してもらえる製品/サービスを提供するとしている。具体的には、3LCD、マイクロピエゾなどの独自のコア技術を生かし、プロジェクション、プリンティング、センシングなどの製品を提供することになる。この中でも特に、商業、産業分野をターゲットにプリンティング製品を提供するC&I事業に力を入れていくとした。

インダストリー事業、コマーシャル事業を拡大していくとした

新規事業の拡大領域として、業務用フォト、図面/地図、ラベル、掲示物をあげた。今回はラベル印刷機での新製品となる

C&I事業では、1999年に染料インクを使用したLFP(大判プリンタ)「PM9000C」を投入。その後、顔料インクや多種インクへの対応など画質で市場をリードしてきた。ラインナップも、A3+から64インチ幅まで揃えている。技術では、360dpiの新世代マイクロピエゾヘッドを2007年から量産。高速性、低コスト、高耐久性、インク選択性よく、信頼性と生産効率を求める商業・産業分野に受け入れられてきた。たとえば、水性白色インクを搭載し、透明フィルムへの印刷の可能性を広げた「PX-W8000」、スカーフやネクタイへ印刷できアパレル分野へ対応したデジタル捺染機(なっせんき、デバイス外販)などが上げられる。そして、今回、高画質印刷、小ロット短納期、低コストなどを実現した産業用デジタルラベル印刷機「SurePress L-4033A」の投入となった。ラベル印刷を皮切りに、業務用フォト、図面/地図、掲示物といった新規事業を拡大していくとした。

「SurePress L-4033A」を紹介するセイコーエプソン 技術開発本部 部長 北原強氏

続いて、セイコーエプソン 技術開発本部 部長 北原強氏が「SurePress L-4033A」を紹介した。デジタルラベル印刷市場は全体で約3.5兆円。いまだにアナログ印刷機が主流となっているが、デジタル印刷機の市場は年約25%の成長率となっている。しかし、国内ではその38%が3,000枚未満の小ロットとなっている。現在の印刷手法では小ロットを効率よく生産するのが難しい。そこで「SurePress L-4033A」の登場となる。既存のデジタル印刷機と比較し、低導入コスト、低ランニングコストを実現し、従来のワークフローでは実現が難しい短納期、小ロットの仕事が取り込めるため、新たなビジネスモデルが確立できるとした。

デジタルラベル印刷機の市場は今後、約25%の成長率が見込める

ラベル印刷の問題点として小ロットの需要が大きい。「SurePress L-4033A」はここを解決できるとした

特徴的なのは、マルチヘッド技術、新開発の水性顔料インク「SurePress AQ ink」、ヒートアシスト機構。1つ1,440ノズルを持つヘッドを15個搭載。全21,600ノズルで印刷を行うことで高速化を実現。新開発SurePress AQ inkは顔料粒子を高機能樹脂で被膜。印刷本紙への定着のほか耐性も高めている。インク自体は、C、M、Yのほか、オレンジとグリーンを追加。これにより特色対応性が向上している。黒も、フォトブラック、マットブラックの2種類を用意。日本酒のラベルなどでは和紙へマットブラックインクで印字することで、黒濃度の高い、しまりのある文字が表現できるとのこと。

マルチヘッドを採用することで高画質、高速印刷を実現している

顔料を樹脂で包んだSurePress AQ inkにより、さまざまな紙への印刷が可能となった

2段階のヒートアシストによりインクの定着率を上げている

SurePress AQ inkを定着させるヒートアシスト機構を2段階で用意。マルチヘッドでインクを吹きつけながらプラテンヒーターで一次乾燥。その後、乾燥炉で二次乾燥させて定着させる。これにより、コートしていない印刷本紙への高精細な印刷が可能となった。このインクはヒートアシスト機構との組み合わせにより実現しているため、コンシューマ用プリンタへ搭載しようとすると、ヒーターもあわせて搭載しなければならない。このため、現時点では搭載は難しいとのこと。

また、デジタル印刷ならではのメリットを紹介。従来の印刷機では、印刷開始から色が安定するまでに時間がかかる。校正と同じ色にするためには大量の時間、紙、インクが必要だ。しかし「SurePress L-4033A」はカラーマネージメントシステムで安定した色を印刷。1枚目から製品の生産が可能となる。これにより色調整のためのインクや紙の削減に貢献できる。

「SurePress L-4033A」の名称について、Lはラベルプリント、4000は型番、33は330mm幅の紙に対応し、AはSurePress AQ inkを示している。つまり、今後、ラベルプリンタ以外の分野への展開、SurePress AQ ink以外の採用、対応する紙の幅のラインアップの拡充が考えられることを示唆している。

国内販売戦略を説明するエプソン販売 取締役 販売推進本部長 中野修義氏

最後に、エプソン販売 取締役 販売推進本部長 中野修義氏が国内販売戦略を説明した。国内では約10,000台のラベル印刷機が稼働していると推測されている。その中でデジタル印刷機は約30台しかない。しかもほとんどが中ロット以上に特化した機種となっている。そこで、「SurePress L-4033A」は小ロットに対応し、高生産性、低ラインニングコストを訴求することで、年商5億円以上の中堅以上かつ小ロットラベル印刷を多く受注している企業、デジタル印刷機の導入で即日配送、小ロット受注などの新たなビジネスモデルを確立しようとしている企業をターゲットにするとした。国内で稼働していると推測される1,000万円超のデジタルラベル印刷機を2012年には推定150台まで拡大させ、エプソンはその中で100台程度を目指すとした。

小ロットのラベル印刷の受注が多い中堅以上、デジタルラベル印刷機で新ビジネスモデルを確立したい企業がターゲット

デジタル化することで、フィルム代、版代、抜き型代などが削減でき、納期も短縮できる

販売では、ラベル生産に特化した非常に専門性が高い分野である、ユーザーの声をダイレクトに聞く、サポートからアフターサービスまで一貫させるために直販にするとした。さらに専門性が高い印刷のため、イベントへの参加でユーザーへの訴求を推進するとした。