東京 表参道で開催されていたアドビの期間限定ギャラリー「station 5」にて、美大生のためのセミナー第2弾『アドビ×美ナビ presents 実践! 作品を「活かす」ポートフォリオ Design編』が行われた。

前回のセミナーにひき続き、就職活動に勝つためのポートフォリオ制作テクニックが紹介された。司会進行はモーフィング 取締役 中川恭志氏と、アドビ システムズ 教育マーケット営業部 宮岸尉子氏。前回のセミナーにも現役美大生が登場したが、今回は、武蔵野美術大学の4年生で、「NHKアート」へ就職内定した吉田孝侑氏が登場した。

セミナーが始まると中川氏は、美大生の就職率や就職意識などについて語った。中川氏は「美大生の就職率は年々下がっています。2011年は45%で2012年は40%程度まで落ち込むのではないでしょうか」と厳しい就職状況について分析した。また、「このような状況のなかで、希望する企業に就職するためには、ポートフォリオがもっとも重要」と語った。

モーフィング 取締役 中川恭志氏

吉田孝侑氏は自身のポートフォリオの作り方を紹介

大学3年生の夏から始める美大生の就職活動

吉田氏はまず、自分の学生生活について語った。吉田氏が就職活動を意識し始めたのは3年生の夏頃。まずは、在籍中に制作した作品をひとつのファイルにまとめる作業に取りかかった。しかし吉田氏は、ポートフォリオを制作中に、いまの自分に力がないということに気づく。吉田氏はポートフォリオの薄さに愕然とし、進路のことも考え直した。だが、「やっぱり自分はデザイナーになりたい」と強く思い、さまざまな企業や職種の先輩たちに会って話を聞き、デザイナーを目指すことを決意。夏が終わると、ポートフォリオに載せるための作品作りに精を出した。吉田氏は当時のことを振り返り、「このころは寝る時間もないほど毎日忙しかった。バイト中も頭の中は就職活動や作品のことでいっぱい。でも、やった甲斐もあり作品数が増え、次第にポートフォリオは厚くなってきました」と当時を振り返った。

翌年3月になると、作品をブラッシュアップしたり、新作を制作。さらにポートフォリオの構成を練り直し、最終調整に入る。こうして完成したポートフォリオを持って友人や先生のところに行き、感想を聞いて回った。吉田氏によると、今の美大生は他人にポートフォリオを見せることをほとんどしないそうだ。吉田氏は「美大生というプライドがあるかもしれないが、一般人や他学部の大学生に見せるのが大切。面接官がデザイナーとは限らず、芸術畑の人ではないかもしれないからです」とポートフォリオを多くの人の見せる重要性について語った。

吉田氏が自身のポートフォリオで気をつけた点は、単なる作品集ではなく、自分がどのような人間かを表現する資料として使えるものにするということ。面接官にポートフォリオを見せながらどのような会話をしようかと、シミュレーションをしたこともあったそうだ。

吉田氏のポートフォリオより。「空間デザイン」を勉強していたため、ギャラリーやショールームを使った作品が多いのが特徴

学生時代にフリーペーパーでデザインセンスを磨く

吉田氏は学生時代に早稲田大学が中心になって編集を行なっているフリーペーパー「Cue」と、美大生のためのフリーペーパー「パートナー」の制作に携わっていたそうだ。この編集活動をきっかけに、学校ではほとんど教えてくれなかったアドビ製品を独学で学び、ポートフォリオの制作にも活かしたという。いまでは「InDesign」や「Photoshop」、「Illustrator」など、デザインの現場で使う主要なツールはひと通り使いこなせるまでになったという。

吉田氏のポートフォリオに関してアドビ 宮岸氏は、「使用している写真が必ずと言っていいほど『Photoshop』で補正されているのを見ると、デジタルデータの一番いい使い方をしている。『InDesign』でまとめたところも賢い選択」と感想を語った。また、中川氏は、「このようなポートフォリオを見ると人間性が見えてくる。きっちり作り込んである部分から、とても仕事が細かい人だと、面接官に印象づけられるでしょう」とコメントした。

セミナーの最後に吉田氏は、「就職活動はとにかく早く動くことが重要。ポートフォリオの作成にアドビ製品を使ったとしても、自分が思っている時間の3倍はかかる。遊びたい気持ちもわかるが就職活動も頑張ってほしい」と学生たちにアドバイスをした。

ポートフォリオは『InDesign』でページレイアウトが組まれている

「文字スタイル」機能を使い、フォントサイズを統一している

A3サイズのポートフォリオ。出力の色にもこだわり、このために10色インクが使えるプリンタまで用意したとのこと

「Adobe CS5」体験版はこちらから