東京大学先端科学技術研究センターの瀬川浩司教授と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、内閣府で実施する最先端研究開発支援プログラム「低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発」プロジェクトを開始することを発表した。これにより、次世代低コスト太陽電池として期待される有機系太陽電池の研究開発を加速、早期の実用化を目指すこととなる。
有機系太陽電池は、従来型の結晶系太陽電池に比べ、製造時のCO2排出量が少なく、原材料の資源的制約が可能となるほか、カラー化・フレキシブル化・大面積化・高速印刷製造などが可能であり、低価格化を達成できる可能性がある太陽電池。
今回の研究プログラムでは、大学、民間企業など19の研究機関が参加、オールジャパン体制を組織し、有機系太陽電池の早期の実用化を目指す。参加企業、研究期間は以下のとおり。
- アイシン精機
- 豊田中央研究所
- リコー
- 桐蔭学園桐蔭横浜大学
- 東京理科大学
- 早稲田大学
- 東京大学先端科学技術研究センター
- 九州工業大学
- 京都大学
- 岐阜大学
- 神奈川科学技術アカデミー
- シャープ
- 新日本石油
- 住友化学
- ソニー
- 太陽誘電
- 大日本印刷
- 東レ
- 産業技術総合研究所
この他、現在オブザーバーとなっている電力会社を含む複数の企業が、次年度以降より参画する予定となっている。
また、同研究プロジェクトでは、有機系太陽電池の実用化を目指して、新材料探索や新構造太陽電池の開発と関連基礎研究、計測技術と標準化などの14のテーマについて研究が行われる。
- 有機系太陽電池の実用化に向けた、新概念、新素材、新構造に関わる基盤研究
- 認証データ計測センター機能構築と要素技術の開発・評価
- 有機無機ハイブリッド接合を用いる高効率太陽電池の開発
- 電荷分離・輸送・貯蔵ポリマーの複合機能制御と新型湿式太陽電池の創出
- 理論計算化学による有機系太陽電池の基礎科学
- 超高効率色素増感太陽電池を目指した新規増感色素の探索
- 有機薄膜太陽電池の劣化機構の解明
- 光電変換の原理解明に基づく高効率有機薄膜太陽電池の開発
- 透明導電膜を必要としない縦型タンデム色素増感太陽電池の機能実証
- 高度構造制御された酸化チタンナノ微粒子の高速合成および製膜技術の開発
- 色素増感太陽電池の高効率化のための要素技術開発
- 色素増感太陽電池の特徴を活かした用途開発と、それに必要な要素技術の研究開発
- 低コスト色素増感太陽電池の製造と発電実証試験
- 高効率有機薄膜太陽電池の作製
なお、同研究プロジェクトは、東京大学 先端科学技術研究センター 附属産学連携新エネルギー研究施設内に集中研究室を設置、多数の各企業・大学・研究所の連携の下に研究開発を進めていく計画。
現在、色素増感太陽電池は、耐久性向上と変換効率向上が課題であり、基礎に遡って要素技術を確立する必要がある。また、有機薄膜太陽電池は、劣化や電荷トラップなどの科学的知見の体系化が課題で、高効率化と高耐久化設計指針を確立することで、劣化試験に耐え得る性能を実現する必要がある。同研究プロジェクトでは、色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池のそれぞれに優れた実績を有するグループが参画、相互に連携して研究を行っていくほか、有機系太陽電池の性能評価を目的とした第3者も利用可能な認証データ計測センターを設立、有機系太陽電池の実用化環境を整備していく予定だ。
同研究プロジェクトでは、これまで多くの研究グループに分散していた知見・研究開発資源を結集することで、オールジャパン体制で世界最高クラスの性能を実現する有機系太陽電池を実現し、国際競争に打ち勝つ研究開発を進めていくとしている。