宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月24日、2010年6月13日に地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」より切り離され、オーストラリアにて回収された小惑星イトカワのサンプルが入っているであろうサンプルコンテナの開封作業に着手したことを発表した。

サンプルコンテナの開封作業の様子(提供:JAXA)

サンプルを搭載したカプセルを回収してからここまでのスケジュールを振り返ると、カプセルがJAXA相模原のキュレーション設備に搬入されたのが2010年6月18日、そこでX線を用いたCTスキャンを実施、コンテナなどに破損がないかなどの状況チェックが行われた。

その後、19日になってから断熱部のシールに用いられたアブレータを除去、サンプルコンテナを取り出し、コンテナのラッチ機構(フタを閉めている部分)などを含める形でCTスキャンを再び実施、イトカワで行ったサンプル採取の後に、宇宙空間でサンプルキャッチャが閉じた際にきちんとシールされているか、地球到着時に破損していないかのチェックが行われた。

回収されたカプセルの内部。下側にカプセルの外側半分が付いた状態(提供:JAXA)

その結果、シールなどは外見上問題ないという判断となり、カプセルの分解およびクリーン化作業が行われたのが20日で、22日までの間にコンテナに付着している粒子などを取り除いたところで、コンテナをクリーンルーム内のクリーンチェンバ第1室へ組み込み、コンテナ内の内圧を測定、惑星間空間で閉じたのか、その状況できっちりとシールが出来たのか、地球帰還時の大気の影響はないのか、などを含めて圧力の推定値を算出、コンテナを徐々に開封し、内部の残留ガスの採取が行われた。「カプセル内部は真空ではなく、何らかのガスが非常に低圧ながら存在していた。それは無事採取できたはず」(JAXA 宇宙科学研究所固体惑星科学研究系の藤村彰夫教授)とのことだが、それが宇宙のものなのか、地球のものなのかについては、次の作業に進み、回収したガスを入れている容器を無事に外せるようになった後の分析次第としている。

1回目のCTスキャンを終えた段階のサンプルコンテナ。サンプルキャッチャはこの中に含まれており、このまま分解するとシールがいきなり外れる恐れがあるため、専用の開封治具を活用して、フタを押さえつけた状態でラッチを外すことになる(提供:JAXA)

24日より始まった開封作業は、コンテナが密封状態を保つための幾つもの機構を有しており、「たった1つしかないものなので、間違いを犯さないためにも非常に慎重に外していく必用がある」(同)とのことで、終了までには1週間程度かかる見込みという。

サンプルコンテナ上部。開封治具に付いた状態でクリーンチェンバに入れられている。中央付近の黒い線はフタが空いたことによる隙間とのこと(提供:JAXA)

その後7月初旬をめどに、コンテナはグリーンチェンバ第2室へ移され、光学顕微鏡とマイクロマニピュレータを活用した内包物の回収が採取チーム5名および東北大学、茨城大学、九州大学による応援3名の計8名の手によって行われる予定。

サンプルキャッチャを取り出したところ。24日時点の作業はここまで。今後、分解を進め、採取を開始、分析を行っていく計画(提供:JAXA)

光学顕微鏡はクリーンチェンバに設置できる特殊なもので、分解能は5μm程度。そのため、「10μm以下程度ならギリギリ回収が可能」(同)とのことで、これらの微粒子がどの程度含まれており、その内のどれだけがイトカワ起源のものかは開けて、回収を行い、具体的な分析を行わなければ不明ながら、「我々も長い間待っていた。これだけの年月をかけて帰ってきたはやぶさが持ってきたものを、やらないわけにはいかない。皆、意気盛んに奮い立っており、必死にやるつもりだ」(同)と、イトカワ起源のサンプル採取に向けた意気込みを見せている。

なお、具体的な初期分析を経た後の結果は、微粒子の量にもよるが、早くても2010年8月以降になる見込み。