パナソニックは6月24日、半導体と強誘電体の界面伝導を利用した、新しい構造のメモリスタを開発したことを明らかにした。メモリスタは、流れた電流量によって抵抗値が変わり、その状態を保持する機能を持つ。今回、強誘電体の性質を用いて半導体の抵抗値を制御し、これまで実現されていなかった10万倍の抵抗値変化を得ることに成功した。これにより、1つの素子で多くの抵抗値を記憶することが可能となったほか、トランジスタとの一体化に成功し、高機能・高集積化の可能性が広がったこととなる。
今回同社が開発した素子は、最大抵抗/最小抵抗の比が10万倍で、1つの素子で多くの抵抗値を記憶することが可能だ。これは、半導体と強誘電体との界面では、半導体の抵抗は、界面にある電子の密度に大きく依存するが、強誘電体は半導体界面の電子密度を大きく変化させるとともに安定保持できるため、これまで得られなかった10万倍という大きな抵抗値変化が実現できたという。
また、通常、目的とするメモリスタの抵抗値を読み出すには、トランジスタで選択する必要があるが、今回開発された素子では、メモリスタの上にさらに電極を形成することで、トランジスタの機能を追加し一体構造を実現。これにより占有面積が増えることなくメモリスタ機能とトランジスタ機能の両方を実現することができた。
なお、同一体構造によるメモリスタを実現するために、「強誘電体上に原子配列の乱れなく半導体を成長させる結晶成長技術」および「メモリスタ上に電極を形成するだけで、メモリスタとトランジスタの2つの機能を1つの素子で実現した高機能化技術」の2つの技術が新たに開発、適用されたという。
1つ目の結晶成長技術は、基板材料から電極材料、強誘電体材料、半導体材料まで、隣り合う原子の距離が等しい酸化物材料を選択、結晶面を揃えて成長させることで、原子配列の乱れの無い良好な半導体と強誘電体の界面を実現したというもの。もう1つの高機能化技術については、半導体の強誘電体側の界面はメモリスタとして機能し、半導体の上部電極側の界面はトランジスタとして機能することを目的に、半導体の2つの界面の機能の独立性を保つ材料設計を実施、これにより高機能化を実現したという。
従来、多くの抵抗値を記憶する機能を実現するには、複雑な回路が必要だった。しかし、同開発成果を用いることで、この機能を1つの素子で構成することができるようになり、将来的には脳型の学習機能を有する素子への展開も期待できると同社では説明している。