パナソニック セミコンダクター社は6月23日、従来比で2桁以上の感度向上により世界最高クラスの感度を実現したテラヘルツ波検出用GaNトランジスタを開発したことを発表した。これにより、室温でのテラヘルツ波検出が可能となり、セキュリティカメラ、材料分析装置などの機器の簡素化が可能となると同社では説明する。
今回開発したトランジスタは、テラヘルツ波をトランジスタ内でプラズマ波(電子の疎密波)へ変換することで電気信号として検知するもの。GaN材料を用いることで、プラズマ波の振幅を大きくし、取り出せる信号強度を増大させている。また、トランジスタの電極をアンテナとして用いることで付加アンテナを不要とし、伝搬損失を無くすことに成功したことで、実用上十分なテラヘルツ波検出感度を実現した。
具体的には、トランジスタのソース/ドレイン電極を無給電アンテナとして動作するように設計し、入射テラヘルツ波をゲート電極近傍に強く集めることに成功。ゲート電極自身をアンテナとして機能させることで付加アンテナを削除でき、感度低下の原因となるアンテナからの伝搬損失を無くした。
また、GaNは飽和電子速度が大きく、プラズマ波を高速に発生させることが可能なほか、ゲート長を短くすることでプラズマ波の周波数をテラヘルツ波に同期させ、電子の疎密波を瞬時に大振幅化することが可能。これにより、高効率にテラヘルツ波を電気信号に変換できるようになった。
さらに、トランジスタ内に発生したプラズマ波は、ゲート電極での漏れ電流により減衰するが、この漏れ電流を抑制するため、ゲートに電子障壁の高い酸化アルミニウム絶縁膜を形成したMOS構造を採用した。
これらの技術を活用することで、同GaNトランジスタは、従来のGaAsトランジスタ比で2桁以上の感度向上となるテラヘルツ波検出感度1100V/Wを実現した。またプラズマ波を用いることで、室温動作も可能となっている。