Googleが開拓した検索エンジンのランキングシステムは、「Webで情報を探し出す」という行為を効率化することに成功した。一方で「Web上に存在しない」あるいは「通常の検索クエリでは探し出すのが困難」といった情報はいまだ多く存在する。そんなWeb検索のすき間を埋めるべく登場したといえるのが、今回紹介する『Quora』というサービスだ。
Quoraは、単純に言ってしまえばユーザー参加型のQ&Aサイトだ。ただユーザーが自由に質問を作り、編集を行い、さらに評価や"フォロー"といった行為によって、Q&Aサイトとしての質が高まるというソーシャルネットワーク的な側面も持っている。Quoraを立ち上げたのがFacebook草創期からのメンバーで元CTOのAdam D'Angelo氏と、その同僚であるCharlie Cheever氏の2名ということからも、このサービスの方向性がなんとなく理解できるだろう。
D'Angelo氏は2008年5月にFacebook退職を発表した後、Quoraの構想を持ってサイト準備を進め、昨年冬にメンバー限定のベータ版サイトをオープンした。その後、公開に足るだけのQ&Aが集まり、一定水準の品質に達したとして、6月21日(米国時間)に機能限定ながら一般公開を開始した。ユーザーはQuoraの新規アカウント作成のほか、FacebookまたはTwitterアカウントを使いつつ、両サイトを連携させることもできる。
一般的なユーザーとしてのQuoraの使い方は、検索窓やトピックのリストから気に入った質問項目を探し、必要に応じてフォローするといった形になる。一方で自分が質問する、あるいは答える側になる場合、基本的には実名を用いたIDを利用することになる。この手の質問サイトは日米を見渡して多数存在するが、この点が1つユニークで、匿名IDではないあたりはFacebookやTwitterなどの文化を引き継いでいるといえるだろう。自らのアイデアや知識を反映するのがQuoraの役割といえるが、実名制の一方でWikipediaのような書き込みのハードルの高さはなく、その点では気軽に参加できる。
ビジネス的な視点からQuoraを紹介すると、D'Angelo氏がCheever氏とともにQuoraを正式に立ち上げたのは2009年4月。「Webにない情報をWebに持ち込むのが大きなチャンス」を目標にしていたという。米Wall Street Journalによれば、今年3月にQuoraはBenchmark Capital主導で1,400万ドル(約13億円)の資金引き出しに成功しており、現在の市場価値は8,750万ドル(約80億円)規模に相当するという。