きょうはどんな割引情報が載っているだろうか──。クチコミ割引サービス『Piku』にはそんな期待感がある。掲載される情報は1件限定。購入希望者が集まれば割引は成立する。従来の割引サービスとはどんな違いがあるのだろうか。
シンプルでわかりやすい共同購入サービス
Pikuはシンプルな割引情報サービスだ。サイトに掲載される割引情報=Piku割は、1件だけ。たとえば、「○○ピザの2,000円分食事券が75%引きの500円に!」というクーポンが気に入れば、まずは購入する。契約成立には、掲載期間の2~3日以内に規定の購入希望者数が集まる必要があるので、Twitterやmixiなどのソーシャルメディアを使って共同購入者を募ってもいい。晴れて人数が集まれば契約成立。あとはクレジットカードで料金を支払い、クーポンを印刷して店舗などで使う。要は割引クーポンの共同購入サービスだ。契約が不成立ならお金を払う必要はない。
2010年4月のサービス開始以来、すべてのクーポンで契約が成立している。「友人に教えなきゃ、という気持ちになる」。うまく"さばけている"要因について、運営元であるピク メディアの谷口優氏はそう説明する。期間内にしか購入できない限定感に加え、情報伝播に最適なTwitter/ mixi/ Facebookとの連携機能を使うことで、「クチコミを誘発する仕組み」(同氏)を作り上げた。ユーザーは自発的に、興味のある情報なら仲間を集め、そうでなくても、興味を持ちそうな人に伝えるように動いてくれる。
ユーザー心理に訴えかけるという点では、"1件だけ"という条件も重要になる。「最近の割引サービスは情報が増えすぎて、選ぶのも探すのも大変。選択肢が多くなると、心理学的には選んだときに後悔しやすくなる。それならば選択肢は一個だけ提示すればいい」(同氏)。
1日1回、サイトトップ(またはメルマガ)に掲載される1件の情報をチェック、興味がなければ終わり、というシンプルな構造。おかげでユーザーは、検索や比較などに余計な時間がとられない。店舗側にとっても、「一定数のユーザーが確実に自分の情報だけを見てくれる」(同氏)というメリットにつながっている。
大胆なサービスで消費者の興味を引く
Pikuのビジネスモデルは、契約成立時にクーポン売上の50%をシェアする成果報酬型だ。広告主に出稿費用はかからない。ただ、他の割引サービスとくらべ、「東京ミッドタウンのイタリアン店5,000円分の食事券が50%引きの2,500円」など割引率が50前後~90%と高めに設定された商品が多い。これはPikuと店舗側の狙いが、クーポンの売上以上に、「クーポンをフックにして、通常価格で来店してくれるリピーターを増やしていく」(同氏)ことにあるためだ。
"来店"が目的であれば、中途半端な割引率では客寄せのインパクトは小さくなってしまう。大胆な割引率を提示し、ユーザーのテンションを下げるような利用条件も付加しない。3~6カ月間は同じ店舗からの情報は登場しない。Pikuの役割は店舗とユーザーを結ぶこと。「ピクッ、となるような驚きを与えてあげたい。節約疲れのような人にも、新しいお店を探したい、新しいことをやりたいという思いはある。それなら『50%オフなので行ってみなよ』と背中をちょっと押せるかもしれない」(同氏)。
ライフスタイルを刺激するサービスに
Pikuのモデルとなった、米国の共同購入サービス「GROUPON」は大成功を収めている。2008年11月の開始以来、会員数は300万人を超え、取引件数は600万件。「YouTubeのような成長スピードだが、YouTubeと異なるのは『お金を生んでいる』点」(谷口氏)。
頭打ちの感が見られた割引サービスに思わぬ新手法があらわれた。谷口氏は、このサービスを日本の商習慣にうまくローカライズしていきたいと話す。たとえば、Twitterアカウント「Pikuちゃん」や「Pikuちゃんブログ」では、「コミュニティとして親密感が沸くようなユーザー参加型サービス」(同氏)を意識した情報発信が行なわれている。ビジネス面では、都道府県別に地域店舗の割引情報を提供したり、既存クーポンと連携していくことなども視野に入れているほか、GROUPONのように1日1件のデイリー更新を実現していきたいという。
開始一週間は1日2,000程度だったPVも、5月中には20万PV近くに急伸した。Twitterの普及はPikuにも追い風となり、自然と適切なユーザーに割引情報が届くような仕組みが回り始めている。取り扱う割引情報は飲食店系が中心になってはいくが、今後はエステやスポーツジム、ホットヨガなどジャンルの拡大も模索している。「ライフスタイルを刺激的にするため色々なことをやってみたい、という人を手助けするようなサイトにしたい」(谷口氏)。
1日1回のPikuチェックが、思わぬ刺激を与えてくれるかもしれない。