STMicroelectronicsは、太陽光発電システムにおいて重要とされる電力最適化機能と電力変換機能を兼ね備えたIC「SPV1020」を発表した。同製品を太陽電池パネル・アレイに使用することで、より低いワット当りの費用によって、より大量のエネルギーの供給が可能になると同社では説明する。
同製品は、各パネルの最大電力点追従(Maximum Power-Point Tracking:MPPT)を個別に設定することが可能だ。MPPTは、太陽光発電システムの出力回路を自動調整し、日射強度の変動、遮光、温度変化、パネルの不整合や老朽化などによる電力の変動を補正。MPPTが無い場合、パネル表面のごく一部が日陰に入っただけで、太陽電池パネルからの電力が10~20%も低下する場合があり、このような電力低下を防ごうとすると、日陰を避けるために設置場所が制限されたり、アレイの小型化が求められることになるほか、場合によっては設置そのものが見直されることになってしまうという課題があった。
同製品を用いることで、アレイ内の全パネルに対して最適な補正を行う集中型MPPTとは対照的に、各パネルに対して個別に補正を行う分散型最大電力点追従(Distributed MPPT:DMPPT)が可能となる。DMPPTは、一部のモジュールに障害が発生した場合でも、その隣接モジュールの性能に関係なく各パネルからの抽出電力を最大限に確保できるため、太陽光発電システムにおけるエネルギーの生産性向上に有効な方式となる。
従来、DMPPTを導入するためには、アレイ内のパネルごとにディスクリート部品のネットワークを構築する必要があったが、同製品では1チップでこれに置き換えるとともに、内蔵のDC/DCコンバータによってパネルからの低いDC出力電圧をACライン電力源に変換される高いDC電圧まで昇圧することが可能となっている。
0.18μmプロセスを活用した同社の第8世代BCDプロセス技術「BCD8マルチパワー・プロセス技術」を採用しており、必要とされる機能すべてを1チップに集積することに成功。同プロセスを活用することにより、MPPTアルゴリズムを実行するためのロジック回路と同じチップに、DC/DCコンバータ用のパワー段およびアナログ回路を集積することが可能となったほか、ディスクリート部品を使って構築された他のソリューションに比べて小型かつ高信頼性を実現することが可能となった。
なお、同製品は、36ピン PowerSSO(PSSO-36)パッケージで提供され、サンプルおよび評価ボードはすでに提供中となっている。量産開始は2010年11月の予定で、単価は、1,000個購入時(最小発注数量)で約5.00ドルとなっている。