米DellのCIO(チーム・インフォメーション・オフィサー)であるロビン・ジョンソン氏が来日し、Dell社内におけるIT効率化への取り組みについて説明した。
ジョンソン氏は、「現在、多くの企業においては、IT支出の70 - 80%が現状維持のために固定費に費やされており、新規投資は20 - 30%のに留まっている。これに対してDellは、50%を現状維持のための費用に抑え、新規投資に50%を回している。新たな投資とは、他社に比べて優位性を発揮できる領域、新たな収益源に対する投資と同義語であり、これはそのまま成長力の差につながっている」と、同社のIT投資の現状について語り、「DellにおけるIT投資額は、売上高に対して1.74%。だが、収益のなかでIT投資額がどの程度かという尺度自体が間違っている。重要なのは新たなことに投資できているかどうか。年間12億ドルの投資額そのものが重要ではなく、そのうちの50%を新たな分野に投資しているという点に着目すべきだ」などとした。
Dellが新規投資に対して50%もの比率で投資できる背景には、「標準化」「簡素化」「自動化」という3つの観点からの取り組みを徹底していることがあげられる。
「エンドユーザーの現場からは、これは必要であるとか、これは残してほしいという声があがる。だが、すべての部門、すべての国において、共通的に利用できるものなのか、ビジネスに本当に求められているものなのかを議論する。我々が導入するものは、スピードと迅速性を兼ね備え、追加の利益を生むものでなくてはならない。それがコスト削減にもつながる。この観点からまずは標準化を徹底して実行してきた」という。
従来は、DellにおいてもIT投資コストの80%が既存システムの運用に使われていたが、97%のシステムをx86サーバに移行し、ひとつのクライアントイメージで全世界に展開するといった「標準化」、6,000台のサーバを削減し、7,000台を仮想化。約1万種類があったアプリケーションを約3,000種類にまで削減するなどの「簡素化」、1台のコンソールから13万を管理するといった「自動化」を図ったとする。
この2年間におけるコスト削減効果は約2億ドル。仮想化と統合化によって8,000万ドル、アプリケーションの削減で7,500万ドル、ネットワークで3,000億ドルなど。ジョンソン氏は、「3億ドルのコスト削減を目指し、これを新たな価値に対して投資していく」とした。
"運用8割、新規投資2割"という状況を50・50まで比率を変えることができたのは「標準化」「簡素化」「自動化」、とくに標準化を推し進めた結果だという |
Dell社内ののサーバ統合は順調に進んでいるという。2010年第1四半期の仮想サーバ数は7,500、これを第4四半期には1万1,000までに増やしたいとしている |
アプリケーションの数も大幅に減らしていく方向だ。"このアプリを残してほしい"というユーザの声にも、客観的な基準をもって検討する姿勢が重要 |
2年間での削減コストは2億ドルに達した。サーバ統合および仮想化とアプリケーション削減が大きく奏効した |
Dellは、2008年にイコールロジック、2009年にペローシステムズを買収し、それに伴い大規模なシステム統合を実行してきた。ジョンソン氏は、「5年前のDellでは、全体の80%がカスタマイズされたアプリケーションであり、地域ごとに異なるシステムが稼働し、これを統合してきた経緯がある。M&Aによるシステム統合もこの経験を生かしたものであり、買収した企業のユニークなところを評価し、どこを残すべきかということを判断した上で、統合を図る。ここでも、標準化への取り組みを徹底して行った」とする。
現在、DellのIT部門には、約6,500人が勤務しているという。そのうち、インフラ担当が1,700人、残りが開発などを担当しているという。「マスターデータマネジメントの領域についても、IT部門が担当しているのが特徴であり、これにより、BIやレポーティングなどを世界規模で有効に活用できる環境を構築している」とした。
また、ジョンソン氏は、「CIOの立場にある限り、技術を理解することは当然だが、成果物を出すこと、業務マネジメントを行うこと、資金を管理するというだけでなく、エンドユーザーの要求を理解することが必要である。私が営業部門、営業戦略に関する共通言語を使いながら話ができないようでは、営業部門から認められることはないだろう。すべての事業、職務について理解することがスキルとして求められている」と、CIOの役割についても言及した。