東京 表参道にあるアドビの期間限定ギャラリー「station 5」にて、セミナー「ガーリーライトニング」が開催された。セミナーには、デザイナーやプログラマー、映像作家など、11人の女性クリエイターが登場した。

人気Webアプリを作る秘訣とは? -閑歳孝子氏

雑誌記者/編集者からWebアプリ開発者に転職した閑歳孝子氏は、『うごくひと2』や『ReTweeter!』、『Twitter Bot』など、多くの人気コンテンツを制作。閑歳氏はセミナーで『Smillie!』を紹介した。Smillie!は、自身の結婚式で、自分らしい何かをしようと思ったのが制作のきっかけだという。それをベースに、他の人にも使ってほしいと思い公開したという。閑歳氏は「誰かのために作ってあげたい」という気持ちがモチベーションを上げることに繋がると語った。

閑歳氏の手がけた作品

『うごくひと2』、なんと月間25億PVを処理

閑歳孝子氏

これからFlashを始める人を応援したい -田中美帆

ActionScriptを使い始めてからまだ1年という田中氏は、制作会社PivotDesignに勤めながら、Flashの学校クスールで補助講師も行なっているクリエイター。彼女がFlashを始めたきっかけは、「純粋に楽しめたから。プログラミングの世界は孤独と思われがちだが、実は広がりも繋がりもある」と語る。これからFlashを学ぼうと思っている人に向けたアドバイスとして、「出力パネル・コンパイルエラーをよく読むことが大事」とアドバイスを送った。

Web制作を始めてまだ半年と語る田中美帆氏

田中氏が手がけた「ベネッセ」のサイト

数々の有名企業のWebを構築する敏腕AD -小山田幸子

Web制作歴約10年の小山田幸子氏は、アマナインタラクティブにてプランニングとアートディレクターを行なっている。学生時代に「Photoshop」や「Illustrator」、「Flash」、「Strata Vision 3D」などの技術を習得した彼女は、卒業後に企業勤務デザイナー、フリーランスを経て、現在に至る。ディレクターとして心がけている点は、制作者のやる気を下げないという点。また、完成した仕事はチーム全員の功績なので、制作チームのメンバーに感謝することも忘れないと言う。そして、女性クリエイターに向けては、「徹夜のしすぎ」や「ネットの見過ぎで女性心を忘れないように」と注意を促した。

小山田幸子氏

小山田氏はイラストで自身の仕事を表現

CM、PVで活躍するロンドン育ちの映像クリエイター -市村幸卯子

映像業界担当として登壇した市村幸卯子氏は、ロンドンの大学で現代アートを勉強していた。そのまま現地でコンテンツ制作会社に勤務し、Flashデザイナーとなる。その後、映像作家となり、CMやPVなどの映像作品の企画・制作・ディレクションなどを行なっている。2005年からは11年ぶりに日本に帰国し活動している。市村氏は「技術を武器に意地を張るのはよくない。私は映像作家なので、知らない人に『それはできない』と言うのは簡単。だがこれでは一緒に進もうという意志がない。共に解決策を考えて進んでいきたい」と語った。

市村幸卯子氏

「Flashのシェイプトゥイーン機能が好き」と語る市村氏

3人の仲間と起業したFlashクリエイター -高岡桃子

制作会社ストリッパーズの創業メンバーで取締役兼デザイナーの高岡桃子氏は、5周年を迎えた自社の道のりについてトーク。大学時代に知り合った仲間と共に歩んできた5年間を、おもしろおかしくスライドを使って紹介。日々の楽しい生活が彼女の言葉から伝わってきた。紹介した作品は、高岡氏が趣味で作った犬のアニメ。これを友だちに送ったところ、すぐ仕事の依頼が来たそうだ。

高岡桃子氏

愛犬のアニメを「Flash」で制作

多摩美卒のメディアアート仲良しコンビ -豊嶋七瀬、飯沢未央

「多摩美術大学のメディアアートコンビ」と紹介されたのは、豊嶋七瀬氏と飯沢未央氏。ちなみに彼女たちは大学時代に先輩後輩という関係。豊嶋氏は制作会社ルートコミュニケーションズにて、Webサイトを制作。彼女はプログラム初心者に向けてFlashを勧めていた。その理由はWebリソースとの相性がとても良いところと、日本語の表示が楽であるという点。その一例として、大学の卒業制作で作ったFlash作品を紹介。これはネット上から言葉を検索し、形態素解析をかけて文章を崩しながら表示させるという作品だった。続いて登場した飯沢氏は、造形と電子デバイスを合わせたユニークな作品を生み出すクリエイター。飯沢氏は、会場には人間の心拍数に合わせて動く心臓のような作品を持参し、動作させた。過去の作品として紹介されたのは、CPUの負荷に合わせて膨らむ臓器「mechanical tumor」。

豊嶋七瀬氏(右)と飯沢未央氏(左)

Webから取ってきた文字を映し出すという作品

心拍数に合わせて動く臓器

農協職員からクリエイターに転身 -山下美緒

「月刊インタラ塾」を運営しているピクルスから、デザイナー 山下美緒氏が登場。彼女は変わった職歴の持ち主で、元は農協の窓口担当係だったという。安定した職に就いていたものの、インターネットに出会ったときの感動が忘れられず、上京してWebデザイナーの道を目指したとのこと。31才だが専門的な技術がなかった山下氏は、それから猛勉強を開始。現在は多くの有名企業のWebサイトを制作するまでになる。山下氏は「いま30代の女性で転職に悩んでいる人、まったく遅くはないです」とエールを送った。

「私もまだまだ勉強します」と語る山下美緒氏

アドビ「CS4」のキャンペーンサイトは、山下氏の作品

女性クリエイターでしかできない仕事とは? -加賀谷のどか

Flashの学校クスールから登場した加賀谷のどか氏。彼女は自身が制作を担当した『LUSH』のサイトを例に、女性クリエイターの持ち味を紹介した。このサイトは全国120店舗の女性販売員が、動画を使ってリレー式に店舗紹介をするもの。キャンペーンが成功したのは、元気な子たちを企画に加えたからと、加賀谷氏は分析した。女性の特徴として加賀谷氏が挙げたのは、感覚でしか動かないところ。「女性は成功のイメージを強く持っていて、行動すると突発的な奇跡が起こることが多い」と語る。最後に「女子のみなさんが集まると大きなパワーを発揮する。束縛されずに自由に動き、女子の輪を広げてください」とコメントした。

加賀谷のどか氏は女性の観点から制作の現場を語る

加賀谷氏の制作したサイト

12才からネットと「Photoshop」にハマったクリエイター -灰色ハイジ

イラスト制作からWeb構築、Flashプログラムまで行なうクリエイター 灰色ハイジ氏。中学時代の灰色氏は不登校児で、親が使っていたPCでネットと「Photoshop」を使って創作活動を行なっていたという。当時は絵を描いても投稿するサイトが限られており、自分でWebサイトも作ることになったという。イベントで灰色氏は、音楽家の渋谷慶一郎氏と共に作ったWebコンテンツ『MOUSEMUSIC』を紹介。これはマウスで矩形を描くと、その位置や面積に応じて音が出るという作品だ。

イラスト制作からWeb構築まで行なう灰色ハイジ氏

灰色氏が描いたイラスト

渋谷慶一郎氏と共に作った作品

「Flash」を使って他言語をコントロールする利点 -松本典子

イメージソースでインスタレーションを手がけている松本典子氏。彼女は「複雑なプログラムはCで書いたほうが楽だが、Flashを使ったほうがよい点も多い」と語る。紹介したのは、ステージ上のダンサーの動きに合わせて映像が切り替わるというシステム。このシステムは、ダンサーの位置を解析するプログラムにFlashを用いている。その理由を松本氏は、「ダンス公演は会場のステージレイアウトがさまざま。そのつどプログラムを変更するより、Flashのシェイプを使ってヒットテストを行なったほうが効率がよい」と語った。柔軟な開発が行なえるのがFlashの利点だとも松本氏はコメントした。

Flashの画像解析結果をもとにHD映像を送出する仕組み

「Director」からプログラムを始めたという松本典子氏

「Adobe CS5」体験版はこちらから