6月4日、ベストクリエイトが主催する次世代アプリケーション開発の活性化を狙ったプロジェクト「Future of Apps」のキックオフカンファレンスが東京国際フォーラムで開催された。同カンファレンスでは、プロジェクトの詳細とともに、業界のトップランナーたちがモバイルアプリ/ソーシャルアプリ開発の課題や展望について語った。
「Future of Apps」は、盛り上がりつつあるスマートフォン向けアプリケーションを中心に開発・販売を支援し、次世代アプリコンテンツ市場をリードするクリエイターエンジニアを発掘するためのプロジェクトだ。1企画当たり最大1,000万円の開発支援が予定されており、最大100社、10億円の予算が用意されている。同プロジェクトでは、資金の援助に加えて、開発活動や事業運営の支援、ベストクリエイトが得意とするリアルアフィリエイトを活用したマネタイズ支援など、開発から販売までをトータルに支援する。
会場は多くの参加者でびっしりと埋まったうえ、立ち見の参加者まで出るなど、スマートフォンアプリ市場の注目度の高さをあらためて感じた。また、スーツ姿の参加者も目立ち、スマートフォンアプリケーションに取り組もうとする企業も多いようだ。
ベストクリエイトの代表取締役社長を務める川野尚吾氏は、「リアルアフィリエイトを展開するなか、スマートフォンのオープンかつ新たな市場が増えてきていることを如実に感じる。そこで、スマートフォン向けのアプリケーションを開発するエンジニアに向けて、資金提供だけでなくマネタイズまでお手伝いしたく、Future of Appsを開催することにした」と、同プロジェクトを立ち上げた目的を語った。
同プロジェクトの詳細については、ベストクリエイトの代表取締役会長である濱中涼氏から語られた。iPhone 3Gの登場以降、スマートフォンの利用者は急増し、アプリ市場も活性化しているように見える。しかし新しい市場ゆえにリスクが高く、投資効果のハードルが高い。実際に利益を出せている企業は一部に限られているという問題がある。
開発者としては新たな市場に興味があるものの、開発環境やノウハウに乏しい。また、マネタイズの仕組みが確立されておらず、予算どりも厳しい状況にある。これらを踏まえ、開発資金援助・サービスイン後の収益化をサポートすることで開発・投資環境を整備し、次世代アプリ市場にチャレンジする新たなクリエイターを発掘することを目指して、同プロジェクトが企画された。
「スマートフォン市場は可能性が高いが、リスク回避が先行し、投資が難しい状況だ。当社としては実際のマネタイズや販促活動の支援を含めて行うことで、参加者に最高の開発環境を提供したい。今年はスマートフォンプラットフォームが拡大される年と考えている。Future of Appsによって、次世代アプリ市場の先駆者になりたい」と濱中氏は語った。
マネタイズ支援は3種用意されている。1つ目は、2年間で7,500店舗の販売店を増やしたリアルアフィリエイトシステム「テルフィー」を活用した、リアル店舗でのユーザー獲得だ。2つ目の支援として、独自のアプリ配信プラットフォーム「テルフィーマーケット(仮称)」を構築する。店舗でのユーザー獲得やプロモーションサイトとの連動といった独自の入口からユーザーを獲得することを特徴としており、独自の課金システムも導入する。3つ目は、プロジェクトに参加したアプリが相互集客できる環境を支援する「トラフィックエクスチェンジ」だ。このほか、個人の参加者に対しては、法人化のサポートも全面的に行われる。
また、後援企業であるサイバーエージェント・インベストメントは、投資先である中国企業のMappnが展開する独自のAndroid向けアプリ配信マーケット「aMarket」での配信支援を予定している。「aMarketに展開可能なアプリを対象に、外国企業でも参入しやすい体制を整え、ローカライズを支援する準備をしている。中国での関連イベントへの招待、資金支援スキームなども検討している」と同社取締役COOを務める田島聡一氏が語った。
プロジェクトの流れは、プロジェクト事務局が一次審査を行った後、販売や投資のプロである各社が支援決定を行う最終審査を行い、決定を下した企業が実際に開発者の支援を行う。審査企業として参加するのは、上記2社のほか、e-まちタウン、SBIインベストメント、アイ・イーグループ、テレコムサービス、クラウンコンサルティングの5社だ。
同プロジェクトでは、「Android/iPhoneアプリケーション」「大手SNSプラットフォーム向けソーシャルアプリケーション」「携帯電話向けアプリケーション」を募集している。来場したエンジニアに向けて、審査企業が具体的に求めているアプリケーションの特徴が具体的に紹介された。
リアルアフィリエイトによって対面での販売活動の強みを持っているベストクリエイトが求めているのは、ショップで売りやすいシンプルかつターゲットが絞られたアプリケーションだ。加えて、テレコムサービスはiPhoneアプリ全般を対象としてソフトバンクショップでの販売が見込めるアプリケーションを、アイ・イーグループは法人営業を前提としたアプリケーションを求める、e-まちタウンはWeb連動や生活密着型のアプリを求めているというリクエストが提示された。
企画募集は6月7日~7月9日にかけて行われ、8月上旬までに最終審査が行われ、下旬には支援対象者が確定する予定だ。2011年3月には表彰式も予定されている。「今Androidにどれだけ投資して良いのか迷っている企業が多いなか、長い目でダイナミックに投資してインキュベーションしていきたい」と濱中氏は語った。
イベント後半では、識者によるスマートフォンアプリ市場の現状について情報提供が行われた。ブレークスルーパートナーズの赤羽雄二氏による基調講演では、ソーシャルアプリ開発にはゲーム開発やゲーマーの経験を生かせることが多いが、少人数・短期間での開発が求められていることが指摘された。
つまり、迅速な開発や頻繁な修正という要求にこたえることができるならば、大きなチャンスをつかめる市場だという。「受注主体のデベロッパーやエンジニアにとって、下請けから脱出するのは困難なこと。しかし、スマートフォンアプリならば、会社の実績や規模に関係なく数百万から数千万のユーザーにアクセスできる。ビジネスを確立・拡大できる稀有なチャンス」と語った赤羽氏は、デベロッパーの勝ち組は今年中に明らかになると語る。次世代アプリ・サービスに参入するには絶好の機会と言えよう。
ピド代表取締役である田中祐介氏をモデレーターとしたパネルディスカッションには、テレコムサービス代表取締役の服部義一氏、ジャーナリストの林信行氏、gumi代表取締役の国光宏尚氏、ジークラウドCEOの渡部薫氏、エヴァンジェリストの梅澤亮氏が参加。開発や販売現場での動きを含め、スマートフォン市場が拡大中であることや、世界を市場とできるビジネスであること、成功者となるために参入するには最後のタイミングであることなどが、力強く語られた。