エクストリーム ネットワークスは6月10日、都内で記者説明会を開催。仮想化技術導入に伴う課題の解決策となる同社のソリューションを紹介するとともに、今年度におけるデータセンター向けの戦略を説明した。

「サーバ」と「ネットワーク」の切り分けが重要

エクストリーム ネットワークス 代表取締役社長 浜田俊氏

今回の説明会に際し、同社 代表取締役社長 浜田俊氏は「シャーシ型から中型ボックスタイプへの移行が進みつつある」というスイッチ製品の動向について触れ、具体的な事例として九州工業大学が学内ネットワークに同社のL2/3スイッチ製品「Summit X450a」「Summit X450e」とL2スイッチ製品「Summit X350」を導入した事例を紹介。

浜田氏は「最上位モデルではないこれらのボックス型製品でも、冗長構成によって安定稼働を実現している」と説明。これからのスイッチベンダーに求められるものとして、10Gbps対応の物理ポート数や冗長性、パフォーマンスに加え、最も重要なポイントとして「スイッチの独立性」という点を強調した。

また同氏は、仮想化技術の導入に際しスイッチ機能を仮想マシン側に持たせることによるサーバ負荷増大などの問題が顕在化していることについても言及。「サーバはサーバ、スイッチはスイッチ」として、サーバとネットワークの役割を明確に切り分けることが大事になってきているという認識を示した。

複雑化と運用面での課題が顕在化

米国エクストリーム ネットワークス データセンターソリューションズ ディレクター ケビン・ライアン氏

米国本社でデータセンター向け事業を担当するケビン・ライアン氏は、仮想マシンがスイッチ機能を持つことによってネットワークの階層が多段階層になってしまう複雑化の問題と、サーバ側とネットワーク側の役割(それぞれの担当者の役割分担)が不明瞭になるといった運用面での問題が顕在化していると説明した。

また、サーバ側とネットワーク側が連携していないことにより、移行の際に仮想マシンの設定とネットワークの設定が不一致を起こすといった仮想環境の管理上の問題にも触れ、ネットワーク側の対応の必要性についても触れた。

このような問題を踏まえて同社は、「四本柱(Four Pillars)」と呼ばれるデータセンター向けのソリューションを紹介。これはすでに米国では発表済みのものとなるが、それぞれの"柱"は「物理」「効率化」「拡張性」「自動化・カスタマイズ化」となっている。

「四本柱」と呼ばれる同社のデータセンター向けソリューション

課題を解決するソリューションの内容

「場合によっては5階層にもなってしまう」という仮想環境におけるネットワークの複雑化の問題に対しては、「Direct Attach」と呼ばれる技術によってサーバ(仮想マシン)側に格納されたスイッチ機能を、ハードウェアスイッチ側に集約することで解決する。

これによってサーバの負荷を軽減し、パフォーマンスの改善を実現する。「Direct Attach」はすでにユーザーによるベータテストが実施されているが、正式には現在IEEE802.1Qbgで標準化に向けた仕様策定作業が行われている「VEPA」(Virtual Ethernet Port Aggregator)の状況を踏まえ、今年10月頃に提供予定とされている。これが同社の「物理」(複雑化の問題)へのソリューションとなる。

「Direct Attach」で仮想環境におけるネットワーク階層の複雑化を解消

仮想環境の運用効率化については、「Extreme Networks XNV」(以下、XNV)と呼ばれるマネジメントソリューション(ソフトウェアモジュール)が重要な役割を果たす。これは、物理サーバ間における仮想マシンの移動などについてネットワークレベルでの可視性を確保するもの。仮想マシンの移行時に、ネットワーク設定も自動的に移行させることが可能となる。ハイパーバイザに依存しないため異種仮想環境を統合的に管理できることが特徴だ(実際の作業は管理ツール「EPICenter」上で行うことになる)。なお、XNVは2010年第3四半期に提供される予定となっている。

「拡張性」については、スイッチの筐体をリプレースすることなく、モジュールの増設だけで100Gbpsまでのアップグレードに対応する仕組みを提供することで実現(今年度中にベータテスト開始予定)。ライアン氏は「10Gbps化が進んでいる昨今では、スイッチ側でのさらなる高性能化が必要」とし、今後はますます40Gbps対応が重要になってくるという考えを示した。なおこの「拡張性」については、上述の「Direct Attach」も重要な役割を果たすことになる。

「Summit」シリーズはモジュールの増設だけで性能向上を実現できる

また同社製品は、スイッチ上で稼働するプログラムのタスク(消費電力の削減など)をスクリプトによって自動実行させることもできる。これには全製品に共通して単一のOSが採用されていることが設計上のポイントとされる。さらに、XMLインタフェースが用意されているため、スイッチを外部アプリケーションと連動させることも可能。ライアン氏は「このような標準的な技術が採用されていることがカスタマイズを容易にする」とした。

なお同社のデータセンター関連事業の売上は、売上全体の20~30%を占めるという。ISPからHPC(High Performance Computing)分野に至るまで幅広い顧客基盤を有しているが、ライアン氏は「実は、VMWareの社内ネットワークにもエクストリーム ネットワークスの製品が採用されている」という事実を明かした。

広範にわたる同社の顧客基盤