Cirrus Logicは6月10日、電力関連市場向け製品として、デジタル力率改善(PFC)制御IC「CS1500」「CS1600」の2製品を発表した。2製品ともにすでに8ピン SOICパッケージで出荷を開始しており、単価は100万個注文時で0.30ドルとしている。
同社は、オーディオ分野とエネルギー分野に製品を絞り込んでおり、「長期的には(現状の売り上げ比率であるオーディオ70%、エネルギー30%を)オーディオ50%、エネルギー50%にしたいと考え、エネルギー分野に対する投資を行っている」(同社President&CEOのJason Rhode氏)とエネルギー分野に注力していることを強調する。ただし、「携帯機器関連のオーディオ製品が好調なため、今後数年はオーディオ関連の比率がより高くなる可能性を見込んでいる」(同)ともしており、より長期的な視点での製品開発でもあるとも説明する。
すでにエネルギー関連ではスマートメータ向け製品などを展開しているが、スマートメータの拡大を受ける形で、「電力の消費だけでなく、電力を制御したい。しかも単に制御するのではなく、インテリジェントかつ高いコスト効果を実現しつつ課題を解決したい、というニーズが高まっている」(同)とのことから、PFCでの電力管理市場への参入を決めたという。
また同氏は、アナログではなくデジタルのPFCに参入したことについて「PFC市場は年間12億個の規模だが、そのほとんどがアナログPFCだ。しかし、欧州がPFCの搭載を義務化するなどを行っており、今後はその要件がさらに厳しくなっていくことが考えられる。そうしたより厳しくなった要件に対し、アナログPFCで対応することは難しいと考え、デジタルPFCでの提供を決定した」と、将来的に市場がそちらに移行するとの見方を示した。
デジタルPFCを活用することで、従来は周辺の受動部品の30~40点とアナログPFCで構成されていた回路に比べ、周辺部品を約30%ほど削減することが可能、かつ電力を消費している各ノードごとの管理も実現可能となるほか、同社製品では最大14dBのEMIノイズシェイピングが可能であり、より安価なEMIフィルタへの変更が可能となり、「従来のアナログPFCでは30セント程度のEMIフィルタが用いられていたが、我々の製品ではこれらを小型化することが可能となり、最大25セントのシステムコストの削減が可能となる」(同)としている。
加えて、同社のプロセッサ技術「EXL Core」を活用し、負荷がかかるあらゆる状況においても高い精度を実現できるアルゴリズムを開発。これにより、PFCの効率は100%負荷時で一般的なアナログPFCと同等の95%、50%負荷時では一般的なアナログPFCが92%に比べて94%を、10%負荷時では一般的なアナログPFCが88%ながら、93%を実現している。
同アルゴリズムは300Wまで不連続伝導モード(DCM)に対応しており、そのため2製品ともに「75Wから300Wまでのシステムをターゲットとしている」(同)とするほか、「300W以上は連続モードに移行してしまうため、将来的には300W以上でもDCMに対応させることを検討している」(同)とした。
CS1500と同1600の違いは、ターゲットアプリケーションが異なるだけで、基本的な性能や機能は同等となっている。CS1500はスイッチング電源やAC/DCアダプタといった主にPCの電源向け、CS1600は照明などの安定器システム向けとしており、これらの違いについては「周辺の受動部品の構成がアプリケーションによって異なる。そうしたソリューションとして、それぞれのアプリケーションに最適化を図ったものが2製品であり、搭載しているOTPメモリの中身を変更することで、これら以外のアプリケーションにも柔軟に対応することができる」(同)という。
なお、同社では今回のPFCに続き、エネルギー関連製品として、「ブラシレスDCモーター制御」向け、ならびに「LED照明」向けの製品開発を行っており、「これらの製品については近いうちに発表を予定している」(同)とのロードマップが示された。