ダッソーCEO ベルナール・シャーレス氏

ダッソー・システムズは、2010年6月7日、8日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において、同社のプライベートイベント「JCF(ジャパン・カスタマー・フォーラム) 2010」を開催している。それにあわせて来日したダッソー・システムズの社長兼最高経営責任者のベルナール・シャーレス氏が、7日、報道関係者を対象に、同社の事業戦略などについて説明した。

シャーレス氏は、「ダッソーシステムが1999年6月にPLMを発表してから11年を経過してきた。この間、PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)は大きな進化を遂げ、業界も発展してきた。では、ダッソーシステムはこれからの10年間、何をしようとしているのかをお話ししたい」とし、「今後の10年はこれまでの延長線上にはない、新たな革新の世界がやってくる。10年前にはすべての企業において、PLMが導入されることになると予想したが、これからの10年は、ライフライク・エクスペリエンスによって実現されるプロダクト・イン・ライフの世界がやってくる」などとした。

シャーレス氏は、「激しい経済的な変革、環境への対応など、世界の変革が加速している。都市人口も大きく変化し、消費者が求めるものも変化している。ユーザー自身も新たなデバイスの登場によって、体験そのものが変わり、『ライフライク・エクスペリエンス』という、リアルの世界とは異なった、別の世界が広がっている。そうしたなかで、製造業はいかに変革するか、いかにユーザーの声を聞くかといったことなどが課題となっている。だが、どんなソリューションが必要なのかを見いだせていない状況にある」などとユーザー企業の現状を示した。

どの業界にも求められる"変革"

JCF 2010の基調講演では、日本法人の末次朝彦社長が、ライフライク・エクスペリエンスによってバーチャルの世界と、実際のリアルの世界との融合が進んでいることを説明。シャーレス氏はその講演から、「ライフライク・エクスペリエンスによって、バーチャルとリアルのコラボレーションの境界線が変化してきている。ライフライクでも、リアルライクと同じモデリングが可能になるといったことや、コレステロールが増殖する様子がシミュレーション/モデリングツールによって理解できるといった動きも出ている。また、3Dはドローイングのツールと見られていたが、いまではコラボレーションのツールとして、ライフライク・エクスフペリエンスのツールになっている」と3Dの拡がりについて言及した。

V3→V4→V5と進化してきたが、次のV6では3Dライフライク・エクスペリエンスで"バーチャルとリアルを融合させる"という

2010年はさまざまなパラダイムシフトが起きるとき。PLMもそれにあわせて役割が大きく変化する

またシャーレス氏は、製薬会社や船舶管理会社での導入、バイオ分野での活用、上海万博にあわせてバーチャル万博の開催を支援している事例などをあげながら、あらゆる分野でPLMソリューションが活用されていることを示し、次のように語った。

「現在、当社は11業種に展開しているが、これは、4年前にスタートした多様化戦略が成功しているものであり、新しい業種の売り上げ構成比が、全体の20%を占めるようになっている。ダッソーシステムは、パワーセクターにおいては、50%のシェアを持っていることは多くの人が知っているだろうが、いまやアパレルでもそのようなシェアを持っていることを知らないのではないか。当社のソリューションを活用するユーザーは多様化しており、多くの業種に展開しているということは、それぞれの業種のノウハウを別の業種に展開できるというメリットにもつながっている」(シャーレス氏)

さらに、「V4は、デジタルモックアップを実現するためのアーキテクチャであり、V5は、PLMを実現するためのアーキチクャであったが、現在のバージョン6アーテキクチャは、ライフライク・エクスペリエンスを実現するものになる。これまで30年をかけて進化させてきたもの」と位置づけた。

また、「PLMは、プロダクト・イン・ライフへし進化することになり、コンテンツ、サービス、コミュニティという3つの要素が重要になってくる。これから10年も、多くの革新があらゆる分野で起こるようになるだろう」などとした。

PLMからPIM(プロダクト・イン・ライフ)へ

モバイルデバイスやタッチスクリーンなど新たなプラットフォームにも対応させていく

一方で、今後のクラウドへの対応については、「クラウドには、柔軟性、スーケラビリティ、シンプルである点が魅力であり、これを避けることはできない。CATIA、ENOVIAをiPhoneで活用できるようにすることを考えている」とした。

日本の企業に対しては、「グローバルエンジニアリングの価値を理解しはじめている。これは優れた進化であり、日本の企業にとってはむしろチャンスである。こうした動きに対して、我々は支援していくことができるだろう」などと語った。

なお、今回のJCF 2010では、「3D in Life - For sustainable business, society and nature」をテーマとして、最先端の3Dを活用したソリューションを提案。設計や製造分野が中心だった3Dの活用範囲が、セールスやマーケティングをはじめとしたさまざまな分野や、消費者にまで広がっていることを示すものとなった。