SAPジャパンは6月8日、同社のIFRS対応ソリューション「SAP BusinessObjects Financial Consolidation」の導入支援ツールとして、IFRS対応用スターターキット日本語版を無償で提供開始することを発表した。SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 副本部長 IFRS支援室 室長 桐井健之氏は「日本でも2015年度にIFRS適用が見込まれていることから、国内企業のIFRS対応プロジェクトが増加する傾向にある。欧州に本社をもつSAPの豊富なIFRS実績でもって国内企業のIFRS対応を支援していくことは、SAPジャパンの義務であり社会的責任」と語り、本ツールを含むBusinessObjects関連ソリューションやコンサルテーションを通じて、国内企業のIFRS導入を積極的に支援していくとしている。
今回提供される日本語版スターターキットは、同社のPDCAソリューション「SAP BusinessObjects EPM」を構成する4製品のひとつ「SAP BusinessObjects Financial Consolidation(BOFC)」のオプションツール。IFRS対応は
- IFRS個別項目(固定資産取引、購買取引、販売取引…)への対応
- 複数会計基準(IFRS、J-GAAP、US-GAAP…)への対応
- 連結アプリケーションの対応
の大きく3ステップに分けることができるが、今回のIFRS対応用スターターキットは上記の3にあたるステップを支援するもの。IFRSに準拠した連結ルールや計算、固有の勘定項目などの設定がベストプラクティスとしてあらかじめ組み込まれており、このスターターキットの設定に各社固有の追加設定を加える形でBOFCを導入できるため、導入コストおよび期間を大幅に短縮することが可能となる。SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 シニアマネージャー 岩本浩央氏は「スターターキットの事前設定を利用し、ルールベースで設定を行うことで、(BOFC導入に)必要な工数の8割くらいはカバーできる」と説明、大幅な運用負荷の軽減が実現できると語る。
BOFCは各子会社が現地で出したローカルな元帳を、IFRSもしくはJ-GAAPに組み替えたデータとして収集し、それぞれの基準で連結処理を実行することができる。今回提供するIFRS対応用導入スターターキットは、基本設定に関わる部分がすべて事前に組み込まれているので迅速かつ容易にBOFC導入を図ることができる |
なお、同ツールに関しては、アクセンチュア、アビームコンサルティング、アロウズコンサルティング、TIS、T4C、デロイト トーマツ コンサルティング、日本IBM、日立製作所の8社がパートナーとして独自のテンプレートを開発し、提供する予定となっている。これによりパートナーごとに差別化が図られるだけでなく、業界/業種に特化したIFRSテンプレートが充実することが期待される。
SAPジャパンは昨年9月、社内の全部門を横断する組織として「IFRS支援室」を設置、以来、コンサルテーションやトレーニング、セミナーなど、国内企業のIFRS対応を支援する活動を積極的に行っている。「SAP ERPはさまざまな業務パターンをもつ構造的なシステム。会計基準に変更があっても、パラメータを変更するだけでどんな仕分けプロセスにも柔軟に対応できる。また、すでに欧州でのIFRS対応実績が数多くあり、現在SAP ERPがもっている標準機能だけで対応できる部分も多い」(桐井氏)というSAPシステムの優位点を武器に、IFRS対応では競合よりも優位な立場にあることを強調する。「単にIFRSに対応した財務諸表をロールアウトすることが目的ではない。ビジネスプロセスを標準化し、販売、購買、経費取引など日々のオペレーションそのものをIFRSに適応させていくことで、会計基準の変化にも柔軟に対応できるようになる」(桐井氏)としている。グローバルでの実績と、豊富な機能、さらに加わった導入支援機能で、激化するIFRSソリューション市場での優位性を保持したい構えだ。