ルネサス エレクトロニクスは6月4日、米Physwareの電磁界解析ツールを用いて、ワイヤボンディングパッケージ内部に特有の、信号-電源-グランド間における電気信号の相互作用を高い精度で電磁界解析するとともに、正確な同時動作シミュレーションを実施する手法を開発したことを発表した。
今回開発した主な技術は2つ。1つは、Physwareの協力により導体表面にのみ計算要素を配置する境界要素法に基づく電磁界解析ツールを用い、ワイヤボンディングタイプのパッケージ内部を解析する技術。これを用いることで、32ビット以上の信号線・電源およびグランドを含む3次元構造を、直流に近い低周波から20GHzの高周波まで広帯域にわたって高精度かつ短時間で解析することに成功した。信号・電源およびグランドすべてを同時に解析することで、電気信号が運ぶ電荷を中和するために、信号と逆向きに戻ってくる、いわゆる「帰路電流」の解析精度の向上を実現した。
2つ目は、これらの解析で得られたモデルと、プリント配線板などメモリシステムの構成要素となる他のモデルを結合する際に発生する帰路電流経路の不連続を解消するシミュレーション手法の開発。信号と電源間の結合が間接的にグランドを含むことを利用して、広帯域電磁界解析結果から帰路電流経路モデルとグランド端子を生成し、生成されたグランド端子同士を相互に接続することにより帰路電流の連続性が保証され、実特性に近い高精度なシミュレーション結果を得ることができたという。 開発した電磁界解析技術とシミュレーション手法を、ワイヤボンディングBGAパッケージに封入した32ビットDDRインタフェースをもつLSIに適用、プリント配線板モデルも含めた同時動作シミュレーションを実行した結果、同時動作の挙動を正確に表現できることが確認された。
これにより、2Gbps以上のデータ転送を可能にする次世代DDR方式のメモリインタフェースを低コストなワイヤボンディングBGAタイプのパッケージで設計することが可能となったことが実証され、同社では今後は、同シミュレーション技術をDDR4などの次世代高速インタフェースを搭載するパッケージ設計に応用、高性能化と低コスト設計の両立を図っていくとしている。