社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2009年度(2009年4月 - 2010年3月)のサーバ・ワークステーションの国内出荷実績を発表した。
同調査は、メーカーによる自主統計であり、市場カバー率はメインフレームやワークステーション、独自OSサーバなどではほぼ100%、IAサーバおよびUNIXサーバでは、デル、日本ヒューレット・パッカードなどが参加していないため、「90%を切るカバー率になっている」(JEITAのサーバ事業委員会・村野井剛委員長=三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社 取締役 第二事業本部長)としている。
これによると、IAサーバの出荷台数は、前年比1%減の31万3,097台、出荷金額では前年比16%減の1,943億6,200万円となった。そのうち、ブレードサーバは前年比14%増の3万8,340台となった。
「IAサーバは、下期から台数出荷が回復し、前年並みの実績となった。出荷金額では上位、下位クラスが減少した。またブレードサーバは、上期下期ともに前年を上回わり、IAサーバ市場を牽引しており、さまざまな領域で活用されている」(JEITAのサーバ市場専門委員会・末永司委員長=東芝ソリューション株式会社 プラットフォームソリューション事業部 企画部 部長)という。
下期からの需要回復については、「昨年度の段階では、IAサーバが回復基調に転じるのは2010年度からと予測していたが、2009年10月以降からは明確な形で回復してきている。IT投資意欲が戻ってきていると感じており、さらにクラウドコンピューティングによる新たなサービスへの対応といったサーバ投資が進んでいる。サーバ統合によって市場が縮小するのではという見方もあるが、新たなシステム形態への投資もあり、市場がシュリンクするイメージはない」(JEITAのサーバ市場専門委員会・石原良一副委員長=東芝ソリューション株式会社 経営企画部 企画担当グループ長)、「5年前のサーバに比べて、現在のサーバは消費電力が半減するなどの効果があり、環境の観点からリプレースするという動きもある」(JEITAのサーバ市場専門委員会・西崎亨副委員長=三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社 第三事業本部フィールド・サービス統轄部 サービス営業部長)などと分析している。
上期のIAサーバの出荷台数は前年比12%減の13万5,981台に留まったが、下期は前年比9%増の17万7,116台と前年実績を大きく上回っている。「3月までの実績を見る限り、2010年度もこの勢いが持続すると見ている」(石原副委員長)とした。
UNIXサーバは、出荷台数が前年比29%減の2万1,285台、出荷金額が31%減の1,225億3,100万円。
「上位クラスは景気後退による基幹システムへの投資抑制、下位クラスではIAサーバへの需要分散があり、落ち込みが大きい。300万円から1,000万円のクラスは落ち込みが少ないが、全体では前年に引き続き、台数、金額ともに減少している。相対的に公共関係の構成比が高まったが、製造業の構成比が減少している」(末永委員長)という。
UNIXサーバとIAサーバを含むオープンサーバ全体では、前年比4%減の33万4,382台、出荷金額では22%減の3,168億9,300万円となった。
一方、メインフレームは、前年比6%減の562台、出荷金額は1%減の1,186億円。
「メインフレームは、案件単位で左右されることが多いが、それを勘案すると大型、中型、小型ともにほぼ前年並を確保した。台数では金融関係が成長しており、金額ベースでは製造業が縮小する一方で、国家公務および政府関係機関が増加している」(末永委員長)という。
なお、独自OSサーバは、前年比57%減の875台、出荷金額は58%減の63億8,400万円。ワークステーションは、前年比2%減の9万5,165台、出荷金額は19%減の203億2,000万円となった。
同協会では、2010年度以降の市場予測についても発表した。
「国内経済は依然として不透明な部分もあるが、前年度下期から明るい兆しが見えており、企業のIT投資も緩やかに回復すると期待している」(末永委員長)として、2012年度まで、IAサーバの台数および金額がともに伸長すると予測した。
2012年度におけるIAサーバの需要予測は、台数で35万7,278台、金額で1,992億400万円。「台数は飛躍的に伸びていくが、金額は単体価格の下落が影響し、伸び率は台数ほどではない。UNIXサーバからの移行に加えて、各企業の中核サーバとして普及が拡大することを期待している。企業のコストダウン、IT投資効率化のなかで、サーバ統合、仮想化、省スペース化の要望が高まり、ブレードサーバの導入が進行。また、昨年度から注目を集めるクラウドコンピューティングの進展に伴い、新たに発生するサービスに対応するためにサーバ導入の需要が拡大するほか、省エネ対応によるリプレース、グリーンIT対応の新規投資の需要を期待している」(末永委員長)とした。
メインフレームは減少傾向にあり、2012年度には429台、689億6,400万円。「高度な信頼性を要求される社会インフラシステムの中核として、今後も一定の需要が見込まれる」と予測した。また、UNIXサーバ、台数、金額ともに減少傾向が続き、2012年度には1万6,026台、金額は888億8,300万円。「企業の基幹システムを担うサーバとしての需要はあるが、下位クラスを中心にIAサーバへの需要分散で減少が継続する」と見ている。
一方、同協会では、IT化トレンドの調査結果についても発表した。
387社のエンドユーザーを対象に調査を実施したもので、2010年度のIT投資予算を前年に比べて増加させるとした回答は28%と、前年調査の26%から増えたほか、減少するとした回答は前年調査の38%から35%へと縮小。「2010年の投資意識は4年ぶりに持ち直した」(西崎副委員長)と分析した。
また、ネットワークセキュリティの確立や、サーバ統合化に注目が集まるほか、クラウドコンピューティングなどによるITの所有から活用視点の導入などにも注目が集まっていることがわかった。
さらにIAサーバの買い換えサイクルが、Linuxの場合で約5.4年、Windowsの場合で約5.5年となっているほか、今後1年以内にサーバを導入したケースは全体の64%と前年の69%から減少したが、外付けストレージは前年の30%から35%に増加した。
そのほか、サーバ統合化では46%の企業が実施。24%が計画および検討中とした。仮想化でも8割近くの企業が注目し、37%の企業が導入しているという。クラウドコンピューティングには、61%の企業が注目しているとの回答を得た。
また、同協会では、国内におけるサーバの年間総消費電力量の試算について発表した。
「この調査結果を対外的に発表するのは初めてのこと」(村野井委員長)としており、内部的に行っていた2007年11月、2009年1月の試算と比べて説明した。
これによると、これまでの予測値に比べても消費電力量は減少する方向にあり、2008年度は76億KWh、2009年度は72KWhとこれまでの予測を下回った。また、今回発表した2012年度の中期予測では、総電力量は61億KWhとなっており、2005年度水準に戻る電力量になるとしている。
JEITAのサーバグリーンIT 専門委員会・西岡浩委員長(=NEC プラットフォーム販売本部 エグゼクティブエキスパート)は、「IAサーバにおいて下位モデルの構成比率が高まっていること、さらにIAサーバの下位モデルにおける平均定格電力が低下していることが要因。今後も平均定格電力は低下していく方向におり、引き続き総消費電力量は減少していくことになるだろう」と予測した。今後、継続的に総消費電力量を発表していくことになる。