NECは、デジタルサイネージ事業を加速する。

NEC ディスプレイ・ドキュメント事業部・岡田靖彦事業部長

2009年度下期には、デジタルサイネージ前年同期比2.5倍規模に事業に拡大。2010年度もこの勢いを持続させ、2倍以上へと事業規模の拡大を図る考えだ。

6月2日、3日の2日間、東京・三田のNEC本社ビル地下1階で開催している同社のプライベートイベント「ディスプレイ・ドキュメントフェア2010」において、屋外で利用することを想定したケーシングタイプの46型高輝度ディスプレイや、冷却ファンを搭載することで屋外などでの温度対策を可能にした46型液晶ディスプレイなどを参考展示。世界最細となるウルトラナローベゼルを採用し、46型を9枚組み合わせたマルチスクリーン化の展開も積極化するなど、製品ラインアップを強化していく姿勢をみせる。

NEC ディスプレイ・ドキュメント事業部・岡田靖彦事業部長は、「現在、32型から70型までの製品をラインアップしている。マルチスクリーンもあらゆる場所で大型ディスプレイ化を実現しながら、低コストで導入できる提案として加速していく。今後はデジタルサイネージ市場において、すべての製品領域を網羅していく考えだ」と、さらなる品揃えにも意欲を見せている。

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されている大画面ディスプレイ。46型ディスプレイを3×3で組み合わせ138型相当を実現している。ウルトラナローベゼル(ベゼル幅6.8mm)のディスプレイにより、ディスプレイ間の境界を極力目立たなくしている点が大きな特徴

業務用ディスプレイで長年の実績

NECは、デジタルサイネージ事業を約10年前からスタート。北米市場などへも展開している。

主な導入実績として、ショーウインドウのマルチスクリーンとして活用する大塚家具、ウェブ対応電子掲示板システムとして社内利用するデンソーのほか、医療分野、自治体、自動車販売店、交通分野などに導入実績を持つ。

NECのWebサイトに掲載された大塚家具の事例

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されているキッコーマンの事例

2007年からはNECディスプレイソリューションズが、開発、生産を担当。NECディスプレイ・ドキュメント事業部において営業、マーケティングを担当するほか、昨年4月には通信メディアサービスソリューション事業部にデジタルサイネージビジネス推進グループを設置するなど、NECグループ全体としての取り組みにも余念がない。

「NECのデジタルサイネージ事業の特徴は、業務用ディスプレイにおける長年の実績と、自社開発によるソフトウェアの提供、そして、クラウドなどを活用したネットワークサービスとの連動にある」と、岡田事業部長は語る。

今回のイベントで参考展示する屋外ケーシングディスプレイ、冷却ファンを搭載した高輝度液晶ディスプレイなどのほか、屋外に設置した際にもホコリが入らないなどの防塵対策や、耐高温性を強化した部品を施すなど、これまでの実績に基づいた、顧客の利用状況を反映した製品開発を行っている点が見逃せない。

ソフトウェアと組み合わせた業種別ソリューション

また、ソフトウェアに関しては、「Ad Window」や「パネルディレクター」を自社開発で用意。「これによって、顧客の要望にあわせて柔軟に短期間に、最適なデジタルサイネージ利用環境を提案できる」とする。

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されているAd Window。さまざまな業種向けのテンプレートが登録されており、ディスプレイに表示させる"お知らせ"等のコンテンツを簡単に作成することができる

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されているパネルディレクター。コンテンツ編集、番組編集、タイムテーブル編集、スケジュール作成などをGUIの画面で行える

NECが得意とする病院や自治体、流通向けソリューションと連動した提案も、同社ならではの特徴といえよう。病院における受付システムとの連動により、患者の待ち番号をデジタルサイネージに表示したりといった提案も行っている。

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されている病院向けソリューションの例。出退勤管理システムと関連付け、医師のプレゼンス(不在、在席、手術中、診察中)をディスプレイに表示させている。写真下部にある2種類のタッチパネル式のディスプレイで自分の名前に触れるだけでプレゼンスの変更が可能。ICカードと連携させることもできる

さらに、顔認証技術を活用して、ディスプレイを見ている人の年齢、性別などを判断。それにあわせたメッセージの表示や、携帯電話にクーポンを転送するといった活用方法のほか、ディスプレイ前に立ち止まった時間などを集計して、告知効果を算定するといったマーケティングにも活用することができる。

一方でクラウドをはじめとするネットワーク環境を活用して、広告配信ビジネスなどの新たな提案を行うといった動きが、今後加速することになりそうだ。

そのほか、「デジタルサイネージのビジネスでは、設置、施工も重要な要素になる。こうした観点でも、NECグループとしての強みを生かした展開を行っていきたい」(岡田事業部長)としている。

需要が高まるリテール市場

今回のディスプレイ・ドキュメントフェア2010では、金融、医療、自治体、教育分野といった形で、業種ごとの展示提案を強化しているが、なかでもリテール(小売り)市場に対する提案に力を注いでいる。

ディスプレイ・ドキュメントフェア2010で展示されているリテール業界を意識したデジタルサイネージの例。通常よりも横長のディスプレイを使用し、"TVモニター感"を薄めている。それぞれのディスプレイを連動させることも可能

「現在、リーテル市場では、デジタルサイネージに対する需要が急速に高まっている。当社でもディスプレイ、スタンド、メディアプレイヤー、ソフトウェアを一体化した美映エル(ミハエル)シリーズに、さらに大画面化した製品を用意するなど、リーテルに最適化した製品のラインアップを強化している。ハード、ソフト、サービスという観点でトータルソリューションを提供できる強みを発揮することで、この市場における存在感を高めていきたい」としている。

ディスプレイ、スタンド、メディアプレイヤー、ソフトウェアを一体化した美映エル(ミハエル)シリーズ。右は32インチモデル、左は参考出展の42インチモデル