日立製作所は5月27日、情報・通信システム社内に、日立と日立システムアンドサービス、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立電子サービスのクラウド事業推進部門の主要メンバー約300名による「クラウド事業統括本部」を6月1日付で設立すると発表した。
執行役常務 情報・通信システム社 プラットフォーム部門CEOの佐久間嘉一郎氏は、同社のクラウド事業の方針について、「企業内にクラウド基盤を構築して各部門が必要な時に利用する"プライベートクラウド"と社外のITサービスをネットワーク経由で利用する"パブリッククラウド"を提供してきた。これからはこの2つのクラウドを組み合わせる"ハイブリッドクラウド"のニーズが高まると思われるので、事業方針に加える」と説明した。
事業目標としては、2010年は企業へのクラウドの本格適用、2012年はハイブリッドクラウドの本格化、2015年は複数クラウドの有機的な連携と一体化を掲げている。
同氏は、ハードウェアやソフトウェアなどを含むクラウド関連の売上高の目標についても言及。2009年の関連売上高は概算にして500億円だったが、これを2012年には2,000億円、2015年には5,000億円に伸ばしていく。また、売上における国内と海外の比率は、「海外が2、3割」という売上全体の比率にまで持っていきたいという。
クラウド事業を強化すべく新設されたクラウド事業統括本部は主に、同社グループのクラウド事業の戦略策定の役割を担う。同本部の下には、「営業・SE部門」、「製品開発部門」、「サービス提供部門」がぶら下がる。
具体的には、以下を実施する。
- 日立とグループ各社のクラウドサービスメニューの一元管理
- 日立とグループ各社間でのクラウドソリューション開発計画の共有
- 新製品情報や適用ノウハウの共有
- 他社クラウドとのアライアンス策定
- クラウドソリューション同士の接続性検証結果の共有
- クラウドソリューション導入実績、およびユーザー環境における課題の整理と解決施策の共有
情報・通信システム社 プラットフォームソリューション事業部 事業部長の高野雅弘氏は、クラウド事業の具体的な戦略について説明を行った。
プライベートクラウドにおいては、「導入・構築の迅速さ・確実さの向上」を、パブリッククラウドにおいては「サービスの拡充」を、ハイブリッドクラウドにおいては「企業システムの柔軟性向上」を強化していくという。
例えば、プライベートクラウドのコンサルティングでは、試算結果の報告に約1ヵ月間かかっていたところ最短12営業日で行えるようになっているほか、非機能要求グレードや標準アーキテクチャ/プロセスツールの導入によって迅速かつ確実に環境を構築できるようになった。
また、パブリッククラウドは現在、サービスメニューの数が約70だが、2010年度中に100以上に増やすほか、4月からは同グループ20万人が利用するサービスの構築・運用のノウハウを提供している。
今後注力していくハイブリッドクラウドについては、フレームワーク「Harmonious Cloud Framework」を整備していく。「クラウド間の連携においては自動化と標準化を進める必要がある。そのために、フレームワークを整備している」(高野氏)
同フレームワークでは、クラウドを構築する製品、サービス、構築技術やサービスの標準規約などを定義している。同フレームワークを利用することで、複数クラウドの相互接続や統合管理が実現される。