ナノオプトニクス・エナジーは5月27日、都内で会見を開き、同社が2011年春の操業開始を目指し、鳥取県米子市の旧日本たばこ産業(JT)米子工場に設置を進めている電気自動車(EV)の生産拠点「ナノオプトニクス・エナジー米子EV工場(仮)」に関して、EVのデザインなどを行うクリエイティブディレクターの選任と、同工場のITによるグリーン化に関してユビテックと提携したことを発表した。
クリエイティブディレクターとして選任されたのは、SWdesign代表を務める和田智氏。同氏は2009年夏ころまでAudiのデザイナーとして約11年半の間、同社のさまざまな自動車のデザインを担当し、担当したAudi A6は2005年の第1回ワールドカーオブザイヤーを受賞したほか、Audi A5が2010年のドイツ連邦デザイン大賞を受賞するなど、数々の賞を受賞した経歴を持つ。
Audi入社以前は日産自動車に15年勤務、初代セフィーロや、初代プレセアなどを手がけたほか、同社初、そして日本初のピュアEVである「ハイパーミニ」も手がけた。
同氏は、ナノオプトニクス・エナジーとパートナー契約を締結、「EVに限らず、この件に関するクリエイティブなことはすべてやってもらうという意味を込めて、CCO(Chief Creative Officer)という役職についてもらった」(ナノオプトニクス・エナジー代表取締役社長の藤原洋氏)という。
和田氏は会見にて、日産時代の最後に手がけたハイパーミニについて振り返り、「当時は社内の理解が得られなかった。しかし、これまでEVがクリエイターの立場として、将来の環境問題や日本経済へ寄与できると信じてきた」とするほか、「これまで多くのクルマのデザインをしてきたが、今回の最終目標は決してEVをデザインすることではなく、その先に存在する人々の暮らしや、持っている価値観そのものを生み出すこと」と今回のCCOとしての役割に対する想いを語った。
また、「私は今回の件で、巨大な自動車メーカーと競争する気はまったくなく、EVをいかに人々の普通の暮らしの中に溶け込ませるか、それを念頭に、モノを作ることを目的とするのではなく、街や工場、人そういったものすべてを含めたグランドデザインを構築したい」と抱負を語り、そのためのテーマを「Primitive」と設定。「ハイテクにこの言葉を結び付けることで、人間が原点に帰ることを狙う」とする。
加えて同氏は、「多くのクルマのデザインを行い、ユーザーなどから美しいものありがとうと言われたこともあるが、今、本当にやりたいことは暮らしの中にそういった美しさを感じさせることができればと思っている。それは"美しい奇跡"なのかもしれないが、EVという新しい時代の乗り物に向けた取り組みに対し、クリエイターとしてこの言葉にロマンを持って、日本という国にそれを提示していければ」と全体として戦うのではなく、人とEVが協調していくことの美しさを求めた取り組みを進めていくことを強調した。
一方のユビテックとナノオプトニクス・エナジーは、ICTを活用し、EV生産工場施設内において、太陽電池などを活用した創エネ、2次電池などによる畜エネ、そして省エネを連携させるトータルソリューション「BE GREEN/グリーンICTプラットフォーム」を構築。これにより、施設内におけるエネルギーを効率よく管理・制御し、「マイクログリッド」ソリューションの実現・実施を目指すほか、マイクログリッドを基盤として、周辺地域との連携した「Green Plant」構想についても、共同で検討を開始する予定としている。