NECカシオモバイルコミュニケーションズ 代表取締役執行役員社長の山崎耕司氏

NECカシオモバイルコミュニケーションズは、2010年度の事業戦略について説明。同社代表取締役執行役員社長の山崎耕司氏は、2010年度には全世界で750万台の出荷計画を示すとともに、2012年度には1,200万台の出荷を目指すことを改めて強調した。

NECカシオモバイルコミュニケーションズは、5月1日付けで設立。さらに6月1日付けで、カシオ日立モバイルコミュニケーションズを統合し、NEC、カシオ、日立の3ブランドを携帯電話事業を展開。NTTドコモ向け、KDDIのau向け、ソフトバンクモバイル向けに携帯電話を開発、供給していくほか、北米のVerison Wireless向けの製品展開を皮切りに、今後、欧州および、インドをはじめとする新興国などに向けて海外事業を強化していくことになる。2012年度における海外事業比率は40%を見込んでいる。「ある時点では海外の主要な地域に、マーケティングおよびアカウントの拠点を置きたい」(山崎社長)としている。連結社員数は約2,300人、売上高は3,500億円規模となる。

山崎社長は、「統合構想から約1年。マルチブランドを展開するこれまでにない携帯電話メーカーが誕生した。今後2年以内にびっくりするような製品を投入し、3年以内に国内シェア1位を目指す。かつて、NECは国内トップシェアを獲得していた経緯がある。それを取り戻す」としたほか、「4年以内にはグローバル戦略を加速し、2,000万台を出荷。8年以内には年間5,000万台、そしてその先には年間1億台を目指す。これからは、大きな目標である1億台を目指して、すべてを判断していくことになる」とした。

本社は川崎市中原区のNEC玉川事業場内にある

当面は国内3キャリアと北米市場向けの商品展開に注力する

将来的にはシェア1位、出荷台数は1億台を目指す

さらに山崎社長は、「私たちは『柔軟性のある想像力』と『革新的な創造力』により実現される画期的なモバイソリューションを通じて、グローバル市場におけるすべてのユーザーに大きな感動と喜びを提供しつづけ、人間性豊かなコミュニケーション社会の実現を目指します」という、同社が定義した新たなビジョンを示しながら、「マルチブランドの徹底活用、3社の得意領域を徹底的に磨き上げた商品、パーソナルクラウド活用およびサービス連携を事業戦略の柱として、国内市場での巻き返しと、海外市場でのプレゼンスの確立、拡大を目指す」とした。

マルチブランドの徹底活用では、NEC、CASIO、HITACHIのコーポレートブランドと、EXILIM、G'z One(カシオ)、Wooo(日立)、Lui(NEC)といったブランドを活用。さらに新ブランドを含めた展開を行っていく。

同社が投入した2010年夏モデルの数々

3社の得意領域を徹底的に磨き上げた商品としては、「瞬撮」や連写、スリム、タフネス、映像、センシングという各社の得意領域を融合させた商品の創出、親会社連携による新たな商品、LTEに向けた商品投入などをあげ、「カシオが持つ電子辞書、日立が持つ家電と、NECのクラウド、LTEといった取り組みを融合した商品の創出にも取り組む。カシオの携帯電話は単なる携帯電話ではなく、防塵/防水といったタフネスが受け入れられている。こうした世界で通用する普遍的な機能を生かし、さらに3社の力を生かして新たなものを創出していかなくてはならない」(山崎社長)とした。

パーソナルクラウド活用およびサービス連携では、「NECが最も力を入れているのがパーソナルクラウド。いかにクラウドと連携するかが、この会社を強くするための鍵になる」と前置きし、グローバルプロバイダとの連携、日本市場で培ったきめ細かいサービスを武器としたグローバル市場展開などに乗り出すという。

「いままでの延長線上で事業を展開していても広がらない。新たなことに挑戦し、新たな領域を攻めていかないと生き残れないし、成長もない」と山崎社長。今後は、国内3キャリアへの展開のほか、海外への展開を強化する一方、低価格領域やスマートフォン領域へと製品ラインアップを拡大していく考えを示した。

NEC、CASIO、HITACHIの3ブランドの強みを生かし、多彩な商品バリエーションをめざす

NECの得意領域であるクラウド技術を武器にパーソナルクラウドへも進出を図る

新会社の組織体制としては、LTE向け製品やブランド戦略、要素技術戦略をもとに、勝ち筋創出に向けた事業開発機能として、事業開発本部を設置。NTTドコモ向けの第一事業本部、au向けの第二事業本部、ソフトバンク向けおよび米Verison向けなどを担当する第三事業本部の3事業本部体制とするほか、開発統括本部、生産統括本部などにより、統合シナジー効果の早期達成に乗り出すとした。

ドコモのLui端末

参考展示したLTE対応製品のプロトタイプ

NECカシオモバイルコミュニケーションズ 執行役員常務の山品正勝氏

カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長の大石健樹氏。6月からNECカシオモバイルコミュニケーションズの役員に就任する

一方、執行役員常務の山品正勝氏は、商品戦略について説明。ブランドビジョンとして掲げる「ケータイをLifewareへ」をキーワードに、商品開発を加速する姿勢を示した。

「Lifeware」は、ハードウェアやソフトウェアを意識した造語とし、「ユーザーの個性演出を行う『パーソナライズ』、溢れる情報と発信手段の多様化による『コミュニケーション』の2つの観点から取り組む。新しい時代のコミュニケーションスタイル、個性の演出では充実感や満足度の向上を図る」とした。

さらに、「最先端のトレンドの体感」「ファッションスタイルを楽しむ」「ずっと付き合える」という3つの観点から、「3DやARによりリアルに表現でき、仲間と共有できる機能、究極の薄さや軽さ、新素材の採用のほか、長く使えるためには、育てる、成長するといった取り組みを行う。すでに具体的な商品開発に取り組んでいる」とした。

NECカシオモバイルコミュニケーションズが提唱するブランドビジョン「Lifeware」

コミュニケーションスタイルにあわせてLifewareも進化する

2010夏モデルの位置づけ

なお、Android携帯については、「単なる携帯電話としての投入や、薄い、軽いといっただけでなく、これに付加価値をつけたものを検討している。年内には出すことができる」(山品執行役員常務)と語った。

一方、カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長の大石健樹氏は、「6月1日以降、会社が統合していも日立が持つ技術やノウハウを生かして新会社に貢献したい」などと語った。

会見では、同社が発売する携帯電話の2010年夏モデルに関しても説明。CMキャラクターである玉木宏さんが登場して新製品の特徴をアピールしたほか、会場にはLTE対応製品のプロトタイプを参考展示した。

同社幹部、右から、取締役執行役員常務の田村義晴氏、執行役員常務の柴野高寛氏、山崎社長、大石社長、取締役執行役員常務の小島立氏、執行役員常務の山品正勝氏

CMキャラクターである玉木宏さんと、NECカシオモバイルコミュニケーションズの山崎社長(右)、田村義晴取締役執行役員常務(左)