三洋電機は5月26日、ドイツ銀行の資産運用部門が主導するコンソーシアムにより進められているイタリア南東部の大規模太陽電池発電所プロジェクトの太陽電池として同社のHIT太陽電池が採用されたことを発表した。
ドイツ銀行資産運用部門は、世界各地で風力、太陽光含め合計で約700MWとなる35件以上のプロジェクトを実現してきた。今回のプロジェクトは、イタリアのプーリア州ブリンディジ県に建設予定で、発電規模は7.567MWを予定。HITパネルは235Wのモジュールで3万2202枚設置される計算となり、すでに5月16日より出荷を開始、発電所の建設も始まっており、2009年9月には竣工する予定となっている。
同社の取締役副社長 副社長執行役員の本間充氏は、「パナソニックグループとしてもエナジーシステム事業は重点事業のフラッグシップ事業となっており、その中でも太陽電池などの創エネ分野は中核となる。三洋電機としても2010年度から2012年度の3年間で総額2900億円の投資計画のうち、太陽電池に約500億円、2次電池事業に約1200億円と、総額の約6割をエナジー事業に集中投資する計画」とエネルギー関連に集中していくことを強調する。
この投資により、同社は太陽電池の生産能力を拡充、販売目標数も2010年で400MWとしているものを、「高効率HIT太陽電池の市場導入や業務用市場の開拓、住宅用市場での日本や欧州での拡販を行っていく」(同)ことで、2012年には900MW、2015年には1500MWへと拡大し、グローバルでTOP3に入ることを目指している。
背景には市場の伸びもあり、世界市場としては、2010年は12.7GW、2011年に15.4W、2012年に19.1GW、2013年に24.6GW、2014年に30.0GWと高い成長が見込まれている。特に欧州市場はこれまでもフィードインタリフ(FIT)制度による市場拡大が続いてきたが、今後も高い伸びと示すことが見込まれており、中でもイタリアは2009年0.7GWだった発電規模が2010年には1.2GWへと大きな成長が見込まれる市場であり、同社としても避けては通れない地域としていた。
今回のプロジェクトの採用の決め手の1つとなったのが、同社が推し進めてきた日米欧の3地域に対応した生産体制。欧州では、ハンガリーのドログに太陽光発電モジュールを生産する工場(ハンガリー工場)を設置、2010年には生産能力を従来の165MWから315MWへと拡大する計画で、「サプライチェーンが欧州で確立されており、しかもそれが安定して供給されることが大きなポイントとなった」(同)と、欧州で行ってきた生産体制の構築が功を奏した結果とする。
また、太陽電池そのものも、ドイツ銀行が独自に第3者機関であるFraunhofer-Gesellschaftの研究所に出力評価を依頼、結果として、他社製品に比べ、カタログ値に近い性能が再現され、出力バラつきも最小という実測値が出され、HIT太陽電池の量産精度の高さが証明されたことも決め手の重要要因となったとしている。
加えて、同発電所には、ハンガリー工場で2007年より生産を行ってきた六角形のセルデザイン(Honeycomb Design cell:HDセル)を採用したモジュールにより、従来と同等のモジュールサイズで出力を215Wから235W(セル効率19.6W、モジュール効率17.0W)へと拡大させたHDシリーズのHIT太陽電池が用いられるほか、1台あたり18枚のモジュールを搭載、1軸駆動で太陽を時間ごとに追尾することが可能な架台(トラッカー)を1789台設置することで、固定設置に比べて発電量を20~30%向上させることが可能となっている。
なお、同社ではすでに研究レベル(100cm2)でセル変換効率23.0%を達成しており、2010年度内には量産セルでも変換効率21.0%を達成、それ以降もより高い変換効率を実現したセルを量産適用していくとするほか、開発中の新タブ設計方式や光閉じ込め技術を活用することで、モジュールレベルでの高出力化を従来の四角セルを用いたNシリーズ、HDシリーズともに2010年第4四半期までに実現したモデルの量産を実現する計画としている。