日本サブウェイとリバネスは5月25日、共同記者会見を開催し、5月17日にトマトの種子を国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟に打ち上げた宇宙教育プロジェクトについて説明した。トマトの種子は2011年11月中旬に世界最後のスペースシャトルであるエンデバー号で地球へ帰還する予定だ。

日本サブウェイ 代表取締役社長 伊藤彰氏

初めに、日本サブウェイの代表取締役社長を務める伊藤彰氏が、今回のプロジェクトに参加するに至った経緯を説明した。

同社は約2年前から「野菜のサブウェイ」というスローガンの下、安心かつ安全な野菜を使用したサンドイッチを提供するため、植物工場やアニス農法を用いて同社専用の野菜の開発に取り組んでいる。

植物工場についてはすでに発表を行っているが、今年7月に、丸ビル地下に植物工場を併設した店舗を構える予定だという。

7月に開店予定の植物工場を併設した新店舗の様子

一方、アニス農法とは化学合成農薬・化学肥料を使用しない栽培技術。伊藤氏は、「アニス農法は、"アミノ酸やリコピンが通常の2倍のトマトが生育可能"、"年間にして、1ヘクタール当たり1.6トンの二酸化炭素が削減"といったメリットがある」と説明した。「アニス農法を採用した植物工場も可能であれば年内に展開したい」

こうした背景の下、同社は、世界で生産量が多くかつ同社のサンドイッチにも欠かせないトマトをきっかけに子どもたちが食の安心・安全について考えることで食育に貢献すべく、今回のプロジェクトに参加したという。宇宙に打ち上げられたのはアニス農法のトマトの種子だ。

リバネス 代表取締役兼CEO 丸幸弘氏

リバネスの代表取締役兼CEOを務める丸幸弘氏からは、宇宙教育プロジェクトについて説明がなされた。

同社は3年前から宇宙教育プロジェクトに取り組んでいるが、同プロジェクトでは、きぼうの有償利用を活用し、宇宙へ植物の種子を打ち上げ、その種子を中学・高等学校にその影響を調べてもらっている。

今回、サブウェイが参加したプロジェクトは第三回に当たる。第三回の有償利用では、サブウェイのトマトの種子を含め、13種類の種子が打ち上げられた。「民間では最多の種子の打ち上げだと思う」と丸氏。

サブウェイとリバネスの共同プロジェクトは「宇宙トマトプロジェクト」という名称で、地域の教育と産業の活性化に貢献することを目的としている。丸氏は「地球に帰還したトマトの種子を栽培し、最終的にはそのトマトを使った食品を商品化したい」と説明した。

ところで、植物の種子の宇宙の打ち上げと言えば、山崎宇宙飛行士が帰還した際に発生した「紛失事件」が記憶に新しい。

JAXAとの共同会見では5月24日まで探索する予定と発表されたが、同氏によると、25日時点でまだ発見されていないという。

同氏は、NASAの意向も含め、正式な回答は31日に発表するとしたうえで、「第二回有償利用の種子は今年9月に打ち上げられる方向」と説明した。NASAからの回答は7月以降になる予定だという。

「今回の件はあってはならないことだが、国内に限らず、米国でもわれわれのプロジェクトが広く知られるきっかけとなった。第三回有償利用においては同じことが起こらないよう対処したい」と、同氏は述べた。