アカマイは5月25日、都内で「今日から始めるクラウド・コンピューティング」と題したセミナーを開催。基調講演では早稲田大学 情報生産システム研究科 客員教授の丸山不二夫氏が登壇し、クラウド・コンピューティングが今後のIT技術に与える影響などについて説明を行った。

「50億人がCRAYを持つ時代」

早稲田大学 情報生産システム研究科 客員教授 丸山不二夫氏

丸山教授は講演の冒頭で、「クラウド・コンピューティング(以下、クラウド)技術はハードウェアの進化を抜きに語ることはできない」とし、マルチコア化が急速に進むCPUの技術動向や初代「CRAY」並みの性能を持つモバイル端末を誰もが手にするようになる(同氏は「50億人がCRAYを持つ時代」と表現)といった現状が、コンピューティング環境のクラウド化を容易にしているという考えを示した。

加えて同氏は「高集積・高性能化だけではハードウェアのコモディティ化は進まなかった」とし、「価格低下、それも"劇的"なレベルでの低下を伴ったことが今日のハードウェアの進化を促した」という点について強調した。

さらに、41TFLOPS(テラフロップス)の処理性能を持ち2002年に600億円で構築された「地球シミュレータ」のシステムが、2009年春に稼働した「地球シミュレータ2」では約3倍の性能(122TFLOPS)を持ちながら価格は1/3以下(158億円)を実現しているという例を紹介。また、この性能を「たった3800万円で超えてしまった」長崎大学工学部のGPUを使ったシステムの事例を踏まえ、「(事業仕分けで注目を集めた)高性能コンピュータも、GPUを使えば高性能かつ低価格化を実現できる」という方向性をあらためて紹介した。

「地球シミュレータ」と「地球シミュレータ2」

「低価格化」がもたらしたコンテナ型DC

丸山教授は「ハードウェアの(劇的な)低価格化がもたらしたものの象徴」として、マイクロソフトやGoogleのコンテナ型データセンター(DC)を紹介。1台につき約2万5000コアという高集積を実現している輸送用コンテナが、マイクロソフトやGoogleのクラウド基盤を支えているという実情を説明した。また、同氏は「米国ではすでに電力効率など環境技術面での性能競争が始まっている」とし、日本におけるデータセンター関連技術の普及の遅れについても指摘している。

Googleが公開している同社データセンターの内部

マイクロソフトが公開している同社「第四世代データセンター」構想(想像図)