富士通、富士通研究所(富士通研)および東京大学の3者は、次世代の半導体レーザーとして期待される量子ドットレーザーで、25Gbpsのデータ通信を実現したことを発表した。

量子ドットの数を増加させるとレーザーの動作速度が向上することから、従来より高密度に面内配列した量子ドットを多層積層することで、従来比2倍の動作速度を実現した。

今回用いられた量子ドットレーザーは富士通および富士通研が、東京大学の荒川泰彦教授の究室との産学連携にもとづいて開発した、ナノメートルサイズの半導体微粒子(量子ドット)を発光部に適用した半導体レーザー。同レーザーは、温度変化にともなうレーザーの光出力の変動を低減できるほか、低消費電力・長距離伝送・高速などの点で、従来の半導体レーザーを超す特性を有しており、データトラフィック量が増加している光ネットワークにおいて、今後の高性能光源を実現する中核技術として期待されている。

従来、データ通信用光源は量子井戸レーザーが用いられてきたが、高温時に駆動電流が増大し消費電力が大きくなるという問題があった。量子ドットレーザーは、3次元半導体ナノ構造を採用することにより発現する量子力学的効果により、温度安定動作や低消費電力動作を実現できるものの、データ転送速度が10Gbps以下に限られることが課題となっていた。

今回、量子ドットレーザーの速度向上を図るためレーザーの光利得を増やすことを目的に、新たな量子ドット作製技術を開発、これを適用することで元となる量子ドットの数を増加させることに成功、25Gbpsの高速動作を実現した。

具体的には、量子ドットは、高真空中に置かれたGaAs基板の上にInとAsの原子ビームを照射して作製するが、基板上でInAsを結晶化させる場合、原子間の距離がGaAsと比べて大きいため歪みが発生、その歪を解放するように3次元結晶化し、その3次元ナノ結晶の1個1個が量子ドットとして動作する。今回、量子ドットの3次元結晶化のための成長条件を最適化したことで、面内方向に従来の2倍の1cm2あたり6×1010個の量子ドットを高密度に形成する技術を開発したほか、併せて面内方向の高密度配列を維持したまま、従来の5層から8層まで多層化積層する技術も開発した。

高密度配列した量子ドットを活性層にもつ量子ドットレーザー

これらの技術を用いることで25Gbpsのデータ通信を実現。将来的には100GbEをはじめとするさまざまな次世代高速データ通信において、温度安定かつ低消費電力な量子ドットレーザー光源を利用することが可能となるという。また、温度コントローラー内蔵の高価なパッケージも不要とすることができるため、低コスト化にもつながるともしている。

なお、今後は今回の開発成果を元にさらに改善を加え、伝送距離の拡大や高信頼化を進めていく予定としており、富士通と三井ベンチャーズによるベンチャー企業であるQDレーザを通した製品化を検討を進める計画としている。