NXP Semiconductorsは5月20日、都内で会見を開催し、同社自動車部門の事業概要などの説明を行った。
同社は現在HPMS(High Performance Mixed Signal)の分野に注力しているが、そうした製品が自動車のどういった分野で活用されているのか、同社VP Global Automotive Sales&Marketing,Business Unit AutomotiveのDrue S.Freeman氏は、"シームレスなコネクティビティの実現"や"安全性の向上"、"運転の快適化"、そして"エコ(グリーン)ドライビング"の4つを挙げる。中でもエコドライブについて同氏は、「ハイブリッドカー(HV)、電気自動車(EV)、ガソリン自動車といった種類があるが、我々としては低炭素社会を実現するHVやEVのみならず、ガソリン自動車でもエコ化は可能と考えており、あらゆるクルマに高いエネルギー効率を提供することを目指している」と説明する。
クルマの発展は、車載半導体の進化により実現されてきた側面があるが、これについて同氏は、「エレクトロニクスの革新がクルマのエネルギー効率を高めてきた」と指摘する。半導体の進化によりもたらされる燃費効率改善の例としては、電動パワーステアリング(パワステ)、ボディネットワーク、トランスミッション、アイドリングストップ、テレマティクスなどがあり、そうした各分野に対し同社も製品の提供などを行ってきた。
電動パワステについては、これを活用することで油圧系機構の削減と、それによる重量とスペースの削減、アセンブリ時間の短縮が可能となり従来の油圧系システムと比べ燃費の向上に加えCO2を10g/km削減することが可能となるという。
また、トランスミッションとして同社の提供するデュアルクラッチトランスミッションを用いることで、200msのギアシフトを実現する通信機能および機械的柔軟性の向上が可能となり、燃費とCO2排出を最大10%削減することが可能となるとしている。
さらに、スタート・ストップシステム(アイドリングストップ)を活用したマイクロハイブリッドカーは欧州での採用が進んでいるが、減速時のエネルギー再生成などによりオーディオ再生時だとしても、燃費とCO2排出を4~10%削減できるとする。
加えて、ボディネットワークとして必要なときにのみECUを機能させるパーシャルネットワークを採用することで、待機時電流消費をECU1つあたり25μA削減でき、潜在的な省エネ効果は最大で70Wに上るとの見方を示した。
テレマティクスについては、オンボードユニットを活用することで、各車両を最適な交通の流れにガイドすることが可能となるほか、EVのバッテリ充電状態(SOC)の最適化、バッテリ健康状態(SOH)のリモート診断などが可能となる。加えて、充電レベルを読み取り充電ステーションへの誘導を行うなどの活用も可能であり、こうした技術を活用することで、燃費とCO2排出は最大16%の削減が可能だという。
同社ではこうしたガソリン自動車でも活用できるようなソリューションの開発、提供を行っているが、HVなど次世代自動車分野についても、高耐圧技術を活用したソリューションの開発を自動車メーカーやTier 1サプライヤと協業し研究開発を進めており、その理由を同氏は「まだHVやEVの市場全体に占める比率は低いが、その比率が増えていくことは容易に推測できる。それが何時かは、何がきっかけになるかが読めないため分からないが、そうした時に遅れないように対応することを念頭に取り組んでいる」と説明する。
なお、こうしたクルマのエレクトロニクス化は主にハイエンドなラグジュアリクラスなどから適用が進むが、その理由としてコストが機械系に比べて高い、という問題がある。そのため、「確かに低価格な自動車がエレクトロニクス化が進んでいるか、と言われるとまだこれからだ、と言わざるを得ない。そのためにはコストを下げる必要があるが、その前にもしかしたら低コストなEVが登場して、一気にエレクトロニクス化が進展する可能性もある」(同)という見方を示す。
また、日本市場については、「さまざまな課題があるのは分かっている。我々もJASPARと連携をとったりと、そうした関連機関との結びつきを深めており、日本市場での対応をこれまで以上に深めていければと思っている」(同)とした。