富士通研究所とFujitsu Asia Pte. Ltd.は5月19日、シンガポール科学技術庁との協力によってバイオ医療の研究拠点を開設したことを発表した。バイオ医療拠点の開設は、富士通グループでは初となるという。
この研究拠点の名称は「Fujitsu Asia Pte Ltd. Fujitsu Laboratories and R&D Division」。ここでは人工抗体技術の開発や事業化に向けた取り組みが行われ、前立腺ガンや胃ガン、循環器疾患、テング熱などの診断に対して人工抗体の適用を進めるという。
人工抗体は、抗体の代替になるものとして知られており、生物から採取するのではなく化学的に合成されるもの。従来はたんぱく質を作る際に機能するといわれるRNAから人工抗体が作られていたが、不安定な特性を持つため特定の分野でしか使われていなかったという。
富士通はこのRNAに代わって、安定した特定を持つDNAを利用して人工抗体を開発するシステムを確立。この同社の人工抗体は「化学的に多様な相互作用を実現できるという他には見られない特性を持つ」(同社)とされている。
なお、シンガポールでは50以上の企業や公的研究機関に所属する4,300名の研究者によって創薬や遺伝子の翻訳、臨床などのバイオ医療に関する研究開発が進められており、バイオ医療における製造額は210億シンガポールドル(2009年)の規模に成長。1万3000名以上の雇用が創出されているという。