米Microsoftは5月18日(現地時間)、オンデマンドでCRMアプリケーションサービスを提供する米Salesforce.comに対し、Microsoftが保有する9件の特許を侵害したとして米ワシントン州西地区連邦地方裁判所に訴訟を申請したと発表した。
Salesforce.comはSaaS (Software as a Service)と呼ばれるアプリケーションのホスティングサービスで急成長した企業の1つ。なかでもCRMに注力していることで知られている。
米Microsoftコーポレートバイスプレジデントで知的所有権とライセンスに関する法務顧問代表のHoracio Gutierrez氏は今回の件について、「当社は何十年もの間ソフトウェア業界のリーダーであり、革新者だ。素晴らしいソフトウェアやサービスを市場に送り出すため、毎年十億ドル規模で投資を続けている。われわれは顧客やパートナー、株主に対して投資における責任を担っており、ゆえに他社がわれわれの資産を侵害することを許すわけにはいかない」とコメントしている。
Salesforce.comが大手競合から直接訴訟を起こされるのは初のケースと見られる。同社は米Oracle出身のMarc Benioff氏らが1999年に設立し、2004年に株式上場を果たした。SaaS専業ベンダーとして成功企業の部類に属しており、顧客増とともに売上や純利益を順調に増やしてきた。
一方で既存のソフトウェア企業のビジネスを侵食するケースも増えてきており、今回のMicrosoftによる訴訟は新興勢力の台頭に既存大手企業が危機を抱き、牽制を含めた先制攻撃と取れる。
米BusinessWeekの報道によれば、米Altimeter GroupのアナリストであるRay Wang氏が「顧客獲得合戦でMicrosot DynamicsとSalesforce.comが競合する機会が増えてきており、長期的に見て両社があらゆるエンタープライズ・ソフトウェア領域で衝突することになるだろう」とコメントしており、問題はCRMにとどまらない可能性を指摘しているという。
さらに同誌によると、今回侵害が指摘された特許はソフトウェアのユーザーインタフェースやアップデートに関するものなど、比較的基本特許に近い内容だと見られる。Salesforce.com自身も2009年の米証券取引委員会(SEC)への申告で「ある大手ソフトウェア企業から特許侵害を指摘されている」とすでに水面下で打診があったことを示唆しており、これがMicrosoftのことだった可能性がある。
最終的にはSalesforce.comのサービス拡大に一定の歯止めをかけ、特許料収入や和解金獲得がMicrosoftの狙いと見られる。